第37話:結婚式

ベスティア公国暦元年9月22日:公都ムルシア・ビーゴ城


「新婦、独立領主、ベスティア公国侯爵、ヘッドフォート王国伯爵待遇、ガルシア家長女、マリア・ドン・ガルシア嬢!

 新郎、ベスティア公国公王、ヘッドフォート王国第七王子、ヘッドフォート王国ゲーラ公爵、マクシミリアン・フォン・ベスティア・ゲーラ・タイラー公王!」


「「「「「ウォオオオオ」」」」」


 マリアとマクシミリアンに万雷の拍手と歓声が送られている。

 敵の掃討とタイラー王家の説得、ビーゴ城を掃き清めるのに時間がかかってしまったが、ようやく結婚式をする事ができた。


 マクシミリアンが高位貴族の御曹司である事は薄々気が付いていたが、まさか王子とまでは思ってもいなかった。


 それも大陸の覇者ともいえる、ヘッドフォート王国タイラー王家の王子だなんて、何処の誰が思うものか!


 そんな超名門王家の王子様が、弱小国の男爵家に婿入り。

 それも当主ではなく一族の端に婿入りなんて、とても許される事ではない。


 タイラー王家が超実力主義でなければ、マリアは愛妾に一人に成れたかどうかも怪しい所だった。


 タイラー王家の家訓に『己が実力で切り取った領地の運営に関しては、王であろうと当主であろうと口出しは許さない』となければ、マクシミリアンは有力な王太子候補としてヘッドフォート王国に連れ戻されていた。


 普通に考えれば、これから内政の立て直しに苦労する旧ビルバオ王国を治めるよりは、ヘッドフォート王国に王太子候補として戻った方がいい。


 だがマクシミリアンはヘッドフォート王国に戻らず、ベスティア公国を建国してマリアを公妃とする宣言をした。


 これがマリアをヘッドフォート王国の王子妃にすると言ったのなら、ヘッドフォート王国もタイラー王家も介入する事ができた。


 だがマクシミリアンが自分で切り取り建国したベスティア公国の公妃にすると言うのなら、偉大な建国王が作った家訓通りするしかなく、何の文句も言えない。


 ヘッドフォート王国の事情は大使やマスターアイザックから聞いた。

 連中、最初からマクシミリアンの能力と気性に惚れこんでいやがった。


 マクシミリアンを将来ヘッドフォート王国国王にするために、同志と語らって陰で色々と動いていやがったのだ。


 だからこそ、ああも都合よく一騎当千の騎士が数多く集まったのだ。

 俺は最初から最後まで連中の掌の上で踊らされていた。


 唯一連中の誤算だったのは、マクシミリアンが本気でマリアに恋した事だ。

 マクシミリアンは、マリアと別れさせられるくらいなら、ヘッドフォート王国と正面から戦うとまで言いやがった。


 ガルシア家としては、マリアの父として兄として協力するしかない。

 大使もマスターアイザックも協力してくれた。

 一緒に戦ったマクシミリアン派の連中も同意してくれた。


 ヘッドフォート王国にいるマクシミリアン派の貴族や騎士は分からないが、共に肩を並べ背中を預けた連中は、マクシミリアンの想いを優先してくれた。


 それと、ビルバオ王国にも地道に領主として民を治めていた者もいる。

 ヘッドフォート王国に併合され、爵位や貴族位を失うくらいなら、命懸けで戦う気概のある者も少なからずいた。


 ガルシア家はそんな連中を統合して一派を創りあげた。

 騎士階級の者達はガルシア家に取り込みヘッドフォート王国との戦いに備えた。

 未開発地の木々をできる伐採して、領地と領民を増やす努力をしている。


 マクシミリアンはサンチェス王家直轄領とビルバオ王国領、腐れ高位遺族共の領地を全て接収し、強力な公王家を創り出した。


「ガルシア伯爵公子、私はヘッドフォート王国の第五王女シャルロッテです。

 これから義理とはいえ兄妹になりますね」


 敵意の塊のような挨拶かよ!

 マリアの為にも争いごとは避けたいのだが、どうしたものか……前途多難だな。

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借金の所為で婚約破棄された妹が、返済のために腐れ外道男爵公子を婿に迎えなければいけない?兄として見過ごせるか! 克全 @dokatu

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