あなたには生きてほしいから
かわき
あなたには生きてほしいから
「早く見つけろ! あいつを生かすな! 見つけたら殺せ!」
家の外から大勢の人の声が聞こえる。僕を殺そうとしているらしい。
僕が何をしたの? 僕は何もしてないよ。
何かの勘違いだよね? そうであってよね。
僕は、何も、してないよ……。
体長六mを超える魚の王様がいると言われている池に釣りをしにもう三時間は経過している。今日は雲一つない快晴だ。周りに影になるような場所はなく、ただひたすらに太陽の光を浴び続ける。熱い。溶ける。早く食らいついてくれ。
始まってから一回も釣り竿はびくともしていない。
「これじゃあ今日の夕飯はなしだな」
僕が独り言のように言うと、それを聞いたレノはこちらを向いて、「だから言ったじゃん、今日はジンさんのところで山菜を取りに行けば確実に食材が集まるって言ったのに」三時間何も起こらなく、まだ十歳のレノはもう我慢の限界が来たのか、持っていた釣り竿を地面にたたきつけ、その場にうずくまる。
「そんなこと言うなよレノ。確かにジンさんのところで山菜を足りに行った方が食材が集まるからそっちの方がいいし、釣りにしようと言った俺が悪い。だけどなレノ、ここであきらめちゃだめだぞ。中途半端に終わるのが一番後になって後悔するからな。一番きつい場面を越えてこそ、達成できることってものがあるんだ」
レノはよくわからなそうに「ふーん」と言う。そして釣り竿を再び持つ。「もうちょっとで釣れるんだね?」
「もちろんさ」
その次の瞬間だった。レノの持っていた竿の先端がガクンと下に引っ張られ、竿は弧を描くようにしなる。
「大物だレノ! 絶対に手を離すなよ! ここからが勝負だ!」
そうして僕はレノの持つ竿を一緒に持ち、足に体重を乗せ全身で引き上げようとする。それでも上がる気配はなく、暴れる釣り竿は重く、逆にこっちが引きずり込まれそうになる。
「せーのでいくぞレノ。せーの!!」
「今日はごちそうね、ありがとう二人とも。これで三日はご飯に困らないわ」
「いや、こんだけでかいんだ。四日はいけるだろう」
「これレノが釣ったんだよ! すごいでしょ!」
ジンさんの家にある大きい冷蔵庫は全室魚の切り身で埋まった。僕とレノはジンさんの家に泊めてもらっている(この生活がもう一年は続く)。食卓にはジンさんの手料理が並び、魚料理も種類が多く、飽きることはなさそうだ。
「レノちゃんすごいね! 今日はレノちゃんが主役だ!」
「えっへん!」
まるで家族のようで楽しい生活が続いていた。周りから見たら僕らは家族のように見えているのかもしれない。ならそうでもいいのかもしれない。ジンさんは独身だ。レノもすっかりジンさんのことを信頼している。母のように思っているのかもいれない。それなら、結婚のことも持ち出すのも悪くないのかもしれない。
これからもっと幸せな生活が続いていくはず、だった。
「革命軍だ! 早く逃げろ!」
街は血の赤色に染まり、人が死ぬ音が火を大きくさせた。
「ジンさんはレノを連れて早くここから逃げてください。その間、俺がやつらの足止めをします」
「お父さんも一緒に逃げようよ。レノ、お父さんと別れるの嫌だよ」
「なーに言ってんだレノ。誰が別れるだなんて言った? お父さんはあとで合流する。絶対にだ」
「本当?」
「本当さ、お父さんは、本当のことを言ったまでだ。そうだレノ、約束をしよう。小指同士を結んで約束をするんだ」
二人は約束をし、そして三人は別々の道へと走りだした。
そして結局、私はあれ以来父とは会っていない。
約束は嘘だったんだ。父らしくないと思った。そして父はもう、私の父ではない。父であってほしくない。あの日の夜、私が目を覚ますと、ジンさんは殺されていた。そしてジンさんを殺したのは、血の付いた革命軍のマントを羽織る、父だった。
「私がなんで強くなりたいかだって? その理由はね、強くなりたいからだよ」
とある村の少年に聞かれた。なぜ強くなりたいのかを。修行をしている姿を見ていた少年が差し入れに村で収穫したトマトをもってきて、休憩の時間に話していた。
「じゃなくて! 強くなってどうしたいのさ。なんか理由があってつよくなりたいんだろ?」
「そーだなー。私は大事な人が大事な人に殺されたの。だから、なんで殺したのかを、知りたい。そして、心残りを消したい。それが理由」
「へー。そっか。そんな理由があったんだ」
意外な返答に少年は言葉に詰まったようになる。下を向く少年の頬に、冷えたトマトを当てる。
「へぃえっ?!」
「なーに、私は強いからね、こんなことでへこたれるような者じゃない。これ、君の分。トマト、美味しかったよ、またここに来るよ」
「え、もう出ていくの?」
「うん。次行かなくちゃいけない場所があるからね。トマトもう一個もらってくよ」
「また来てね!」
「ああ!」
毎日の夜、つい昔のことが映像として脳裏に再生される。
血の匂い。血を流し息をしないジンさん。そしてその先には、革命軍のマントを羽織った父が遠くへ行く姿。
父がなんであんなことをしたのか。ジンさんをなぜ殺したのか。
私はあれから十年、革命軍を恨み続け生きてきた。無罪有罪関係なく人々を殺し、己の野望を達成すべく生きる人たち。あんな邪道な奴ら。生きていてたまるか。
村を出てから二週間が経過していた。
長年の情報収集の結果、革命軍の第二の拠点を見つけ出すことに成功した。ここには本拠地の情報がたくさんあるという。今まで革命軍のことについて情報を集めていたが父の情報が一切出てこなかった。そして調べていくうちに本拠地には五人しかおらず、その五人の情報については全く収集できなかった。きっとそのうちの一人が父なのだろう。今回の潜入で父の情報を入手できれば、真相に一歩近づけるかもしれない。そして夜明けの前、私は革命軍の第二拠点に潜入していた。
革命軍第二拠点は地下にあり、その場所は大型ショッピングモールの下にある。入り口は一か所しかなく、厳重な警備があったが、私には「変装」という能力があり、見た者、触れた者に変装でき、聞いた声も真似ることが出来る。この能力のおかげで今までも何か所もの拠点に潜入することが出来た。
「おいそこ、止まれ」
急に背後から声をかけられ足を止める。
振り返ると、そこにいた大男は私の顔をまじまじと見ると、
「お前、どこ配属のやつだ」
変装するためにひとり身柄を確保した時にそいつから出たカードのような物に書いてあった情報を言う。
「私はモルレンス配属の十三期生のレイト・ガーランスです」
「ふーむ」
大男は顔ぞのぞき込むと、「まあここにいるってことは威勢のあるやつってことだな。今夜は確実に任務を遂行するんだ。フレイさんの顔に泥を塗らないようにな」
そう言うと大男は通り過ぎて行った。
そして私は、高く鼓動を打っているのを感じる。少し冷や汗もかいている。さっきの大男から出た言葉に私は確信をついた。フレイという言葉。フレイは、父の、そして私の苗字だからだ。二コラ・フレイ。これが父の本名。私が長年探している人の名前。
「やっと近づいた……」
奪った拠点の設計図をもとに、資料室に向かって歩き出す。
「ここが資料室。そして番号は……」
私は変装だけでなく盗むことも上手だ。これは能力ではないが、変装をして拠点に忍び込んでいるうちに上達した技だ。盗んだ番号を入力すると鉄の扉が開いた。
たくさんの調査結果、歴史、そしてメンバーについての情報がここに集まっている。私は端から端まで目を通す。そしてようやく、第一拠点についての資料へとたどり着く。
第二拠点では見つかることがなく幸いだった。そして本拠地の場所が分かったことにより、いよいよ私の過去に決着をつけるときが来たようだ。
「革命軍だ! 逃げろ!」
漁業が盛んな港町はその日の夜、革命軍による攻撃を受け火の海と化していた。
「また血の匂い……。どれだけ人を殺せば気が済むのよ……。お父さん!」
火の海を私は短剣を片手にひたすらに走り抜ける。あの時第二拠点で盗んだ情報。それは、父が指揮をとり港町を襲撃する作戦だった。
そこに行けばお父さんに会える。そう思い、私はけじめをつけるためにここに来た。
すると建物の隙間から革命軍が切りかかってくる。
「しねえ!」
刃の行く先から私は身をかわしよけ、そのまま敵の背後に回って敵を殺さないように、でも動きがとれないようにするために短剣を、刺す。
「――まともに生きなさい」
「ぐはっ、いてえ!」
私は先を急ぐ。燃やされ倒れてくる建物を間一髪でよけ、襲いかかる敵をひとりひとり倒していった。
そして開けた噴水のある広場に出た時だった。
「こんなに威勢のいいガキがいるとはね、しかも女か」
街伏せていたのか、私の行く先に突如大男が現れた。
「女で悪いか! 私は先を急いでいるから、そこをどいてほしいんだけど」
「それはできない話だ。この先に行かせるわけにはいかないからな」
「それって、フレイってのがいるからか?」
「……貴様、それをどこで?! そうとなれば、貴様をここで殺すまで!! ――俺をなめない方がいい、女よ。俺は能力を授かった人間だ。これまでのざことは違うぞ」
「望むところよ」
「ぐっ!!」
大男の拳を受けたとたん、私は建物の外壁にまで吹き飛ばされていた。コンクリートの壁に衝突したダメージは大きく、骨が何本か折れたような音がした。
「おいおい、これでおしまいなんてことはないだろうな。もっと強いやつだと思ったのに、これじゃあ残念だ」
変装という能力では太刀打ちできるはずはない。兼ね備えた瞬発力、運動神経、そして短剣のスキル。これであの大男を倒しことは可能なのか。やつの能力はとても厄介だ。これほどまでに吹き飛ばされたんだ。殴られた瞬間はガードしていたこともありあまりダメージがなかった。しかし、超人並みに吹き飛ばされたということは、それが能力なのだろう。
「気づいただろう? 俺の能力に。俺はノックバックの使い手、そして、兼ね備えた筋肉がその効果をより強い物にする。
「なるほど、つまり、そのご自慢の筋肉分、相手を吹き飛ばさる力が上がるというわけね。あなたにぴったりの能力じゃない」
「褒めてくれてありがとう。それでさっそくだが、死んでくれ。お前を生かしてはおけない気がする」
能力は人が人生の崖っぷちに立たされた時に、そのうちの約一割に授かると言われる。そして能力を授かった者は全員、十年で死ぬ。どっちみち私は死ぬのだ。どうあがいたって、死ぬ運命なのだ。目の前にいる大男だっていつかは死ぬのだ。これは無駄な争いなのかもしれない。だが、ここを乗り越えて、私は過去と向き合いたい。後悔して死ぬ運命だなんていやだ。だから私は、ここを越えないといけない。
「お前の顔は暗いよ。怖いくらいにだ」
「来た! 逃げろー! 顔面お化けが来たぞ!」
「なんでそんな顔しかできないの」
散々言われた。だから私はその都度笑顔を作った。正直苦しかった。作り笑いは長くはもたないんだ。いつか限界がくるんだ。自分でもわかってた。私は疲れてるって。でも、まわりに認められたくて。……あの夜の出来事以来、私は死んだような毎日を送った。私から笑顔は消え、生きる意味をなくした。だから死のうとした。死んだほうがましだと。だけど、あの時の情景が浮かんでは、まだ死ねないと、どっかの自分が、私に言い聞かせた。あの幸せな毎日はすっと続くんだと、そう思っていたから。今でも願っている。私は幸せになれる、と。
私は変装の能力で本当の笑顔を手に入れられた。疲れることもない、なんなら人が近寄ってくるようになった。みんな私をいい人だと言うようになってくれた。そして私は勇気を持てるようになった。私は生きてていい! と。
「終わりだー!!」
大男が叫び殴りかかってくる。これをくらえば私はただでは済まないだろう。それでも私は、
「笑っている……だと?!」
変装は私以外のものにも影響を及ぼすことが出来る。私は外壁を鉄の針のある壁に変える。
「まずい!」
私は地面を氷に変装させ、滑るように大男の股の下を抜ける。
そして大男は拳を針がたくさんついた壁に向かって殴った。
「ぐぁぁ!!」
大男の拳に突き刺さった針は腕まで貫通し、大男は膝をつく。そのすきに私は背後に忍び寄る。
「私は先を急いでいるの。さようなら」
私は短剣をやつの両足に突き刺し、大男はその場に倒れる。
いくらすごい筋肉があっても生身の人間だ。刺されてはどうもできない。
もうあれから十年が過ぎようとしているのか……。僕はもう、取り返しのつかないことをしてしまっている。これでよかったのだろうか。レノ。僕はこれで……。
焼き尽くされていく街を見下ろしながら僕はあの日の事を思い出す。
レノとジンさんを助けるために僕は革命軍と戦った。そして僕は思いにもよらない再開を果たした。あの時、一時間ぐらい革命軍と戦い、あらかた片付いた時だった。実の兄であり、双子でもあるラグ・フレイが目の前に現れたのだった。ラグは昔、両親を殺してそこに住んでいた村人を全員殺した殺人者。昔からサイコパスな一面があり、突然手にした能力を使い彼は十歳にして革命軍入りした。
「早く見つけろ! あいつを生かすな! 見つけたら殺せ!」
僕はあれ以来双子の兄と見間違わられては、事件を知る者から殺されそうになる毎日を送っていた。
僕は何も何もしていないのに。
「弟じゃないか、こんなところで何をしているんだね」
「お前に弟と呼ばれる筋合いはない。俺が長年どんだけ苦しんで生きて来たか、分かるか!」
「――お前に言う時が来たようだな。あの時の真相を……」
「来てしまったか、レノ」
「――、お父さん……、なんであの時、私をかばったの……?」
「――レノ、知ってしまったか」
「そうよ。あの時、ジンさんを殺したのは、私なんでしょ?」
「……」
「私見たの、第二拠点で調べている時に、あの日の映像が。あの化け物が私なんでしょ?」
「ああ。あの化け物はお前だ。あれはお前が授かった能力、「戯れ」。あの姿は、別名魔女。あの時、お前が革命軍に囲まれたときに、ジンさんをたすけるために突如授かった能力だ。でも、あまりにも強大な力を制御できずに、止めようと思ったジンざんまでもを……」
「やっぱりそうだったんだね。私が……。うぅ」
「あの日、村の住民を全員殺したのは、お前だ、二コラ。お前の授かった能力は魔王。いかなる者をひれ伏す力を持つ。でもその能力を制御できなかったお前はすぐ気絶してしまった。俺を殺そうとしたその瞬間でな。そして俺はお前の能力を受け継いだ。どうやってかはしらないがな。奇跡っていうものは起こるらしい」
その後兄は死んだ。能力を授かった者は十年で死ぬからだ。
そして僕は暴走するレノを止めるべく二人のもとへと向かった。しかしその時には遅かった。気絶しているレノの隣には、レノを抱きかかえるようにして血を流し、息をしていないジンさん。レノが真実を知るにはまだ若すぎる。
ごめんな、レノ。一緒にいられなくて。
実の父にもなれなくて。ごめんな。
本当は知ってるんだろう、実の親子じゃないって。それなのに、俺をお父さんって。
俺は、親失格だ。
二コラは死んだ兄のマントを背負い、その場を立ち去った。
「……私は、そのことが知りたくてここに来たんじゃない。なんで、私を置いていったの! 一人にしたの! ずっと、私は、苦しかったの!!」
「……!!」
――僕もそうだった。一人だった。兄は僕をかばい、革命軍に入った。あの事件を全部背負うために。だけどぼくらは双子で、運が悪く顔が似ていたから、当分の間は逃げるだけの生活が続いていた。その間僕はずっと、一人だった。心細かった。それをわかっていたのに……。
「私たち、本当は血、繋がってないんでしょう? 私が捨てられていたのを拾ったんでしょう。そのときまだ、十歳だったんでしょう? だって、お父さん、若いもん! 若すぎるもん! ずっと疑問に思ってた。それで、よく考えたらわかったんだよ……」
「すまなかった、レノ。このことを言えずにいて。怖かったんだ。あの時の空間が、三人でいたあの空間が幸せだと思っていたかった、だから、言い出せずにいた」
「私はあの空間が好きだったよ。いくら血がつながってなくても、あれは家族だよ! 家族ならさ、本当の事も言い合えたはずだよね……」
胸の奥からこみ上げてくる何かが溢れそうで、それを必死に止めていた。
そして気づいた時には、暖かい涙の大粒が止まることを知らずにあふれ出ていた。
「……あれ、おかしい、よ。なんで、私、泣いて……」
二コラはレノを抱きしめる。泣くことを知らないように生きてきたレノは涙を抑えられず泣いている。
「その仮面には、もう疲れただろう。すまんな、ひとりにさせて。でも大丈夫。俺はここにいる。家族だもんな。これからも、ずっとお前を支えるよ」
レノの被っていた仮面は外れ、今まで背負ってきた鉛のように重い鎧も外れた。
レノは長年、革命軍を恨み生きて来た、が、それは表面上の事だった。そう言い聞かせて生きて来ただけであって、本当は、父の姿を探していたのかもしれない。父がそんなことをするはずがない。だって、自分の右手には、人を指すような感覚、それと、血がついていたのだから。
「お父さん、私、もう長くないの。知ってるでしょう、能力を授かった人が、十年で死ぬって。それがね、今日なの。やっと会えたのに……。やっと、本当の家族になれると思ったのに」
「――レノ、お前はまだ死ぬにははやいよ。死ぬのは、俺だ……」
二コラは膝から崩れ落ち、そして仰向けになる。
「お父さん!」
レノは二コラの隣に膝をつき、左手で二コラの頭を抱える。
「こんな奇跡って、あるんだな……。しかも、二回も、か」
二コラは吐血をし、体の色がどんどん血の気が引くのが分かる。
「なに、奇跡って、なんでお父さんが? なんでお父さんが苦しそうなの?!」
「レノ、お前の能力は十年前に俺の中に入ったみたいだったな。そして、変装ってのも、いまさっきこっちに入ったみたいだ」
「なんでよ! なんでお父さんに! これで別れるなんて嫌だよ!!」
「……レノ、よく聞け、お前をこの先一人にさせて、ごめんな。でもな、諦めて死のうとするのだけはやめろ。一番つらい場面を乗り超えてこそ、行きたい場所にたどり着くんだ。つらいことがあったらため込まずにどんどん吐け。お前のここの中に俺は、ずっといるからな」
「お父さん……、最後にしないよ。私たち、これから先も、ずっと一緒に暮らすんだよ! 家族だもん! 本当の、家族に、なれたんだもん……」
――レノ、お前には生きてほしいんだ。
「これじゃあ今日の夕飯はなしだな」
お父さんが小声で言った一言を聞き逃さなかった。
「だから言ったじゃん、今日はジンさんのところで山菜を取りに行けば確実に食材が集まるって言ったのに」
私はもう飽きたのだ。釣りってたくさん釣れるものだと思っていたのに、小魚一匹すら釣れない。
「そんなこと言うなよレノ。確かにジンさんのところで山菜を足りに行った方が食材が集まるからそっちの方がいいし、釣りにしようと言った俺が悪い。だけどなレノ、ここであきらめちゃだめだぞ。中途半端に終わるのが一番後になって後悔するからな。一番きつい場面を越えてこそ、達成できることってものがあるんだ」
私は後悔したくない。だから、中途半端に終わらせないよ。
お父さん、私、結婚するんだ。今まで支えてくれて、ありがとう。大好きだよ、お父さん。
あなたには生きてほしいから かわき @kkkk_kazuya
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