第49話 非常識
「同性として私と仲良くしようではないか。私はこっちの世界の方が好きだしそもそも故郷なのだから」
「そうですか」
「こうして、私の家系が残っているのもうれしい。君も私の家系を絶やさないように続けてほしいものだけど君がもしこちらの世界に来るというのであれば少し残念だ」
「何故ですか」
「私は、来るのは構わないと思っているだけど、こちらの世界で家系が途絶えてしまうのだけは私としてはあまりうれしいことではない。君が残してからこちらに来るのであれば私もうれしい。まあ、こんな話しを続けるのではなく、過去の話をしようか」
「過去ですか」
「そう、私が生まれ育った時代。私はこの世界が好きだけど、今の時代は無機質であまり好きではない。だからこそ君に見て欲しいんだ。不自由な世界だけどまだ温かみがあった時代を」
「まあ、それは後で」
まあ、彼と話しをしながらゆっくりと過ごしていた。彼も彼女と同様に馴染んでおり不思議に感じるがそのような能力があるのだろう。これ以上考えないようにした。
深い夜になる。外は明るいが時計は夜遅くを指していた。
「今は暇かい」
そうして入ってきた。彼は優しそうな言葉でかけてきたので何故か不安はなかった。しばらくして過去に向かうことになった。
「しばらく目を閉じててくれないか」
言われるがまま僕はそれに従った。
彼はどうしても過去を見せたいみたいだ。しかしながら僕があまり乗り気ではなかったのが少し残念だったみたいだ。しかし、こうして今来ている。
「見ていいぞ」
今とはかなり違う異質な風景が広がっていた。
「ここは、2019年。君のいた時代から計算すると100年以上前になるんだね」
「そんなに」
「だけど、本質が変わっただけで大きな変化はそこまでない。一番大きい変化はあいつが作ったAIだろう。今は、君も使うことはできないと思うけど、不便な時代だよ」
「そうですかね」
「君はまだ遊びに来ただけだから多分理解できないんだと思う。実際にここで生きるとなると不便だと思うよ。君の常識が通用しないのだから」
「それにしても街は綺麗に整備されていますね」
「そこはそこまで気にすることではない」
「それにしても、疲れ切った顔をしていますね。そんなに大変なら仕事を辞めればいいのに」
「そうだね、みんなやめたいと思ってると思うよ」
「それなら」
「昔は働かないとお金が稼げなかったからね。お金がなければ何も出来ない世界だったからこうしてみんな必死に働いているんだよ」
僕が世界のデバッグ作業 @SiraiKano
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