家の中をただ悠然と泳ぐもの

 危険な民間療法・代替医療的なものに傾倒してしまった親により、いろいろ大変な目に遭わされた兄弟のお話。

 硬質な読み心地の現代ドラマです。
 紹介文にある「※児童虐待注意」の但し書きの通り、幼い兄弟が大変な目に遭ったりするお話。
 ただ「虐待」と言っても露骨に攻撃的・加害的なものではなく、むしろ親自身にとってはきっと「我が子を思っての行為」であるのがまたなんともやりきれない。
 餃子の件はもう本当に胸にぶっ刺さりました。あまりにも悲しくて……。

 現実的な不幸を描いたお話の中で、唯一異彩を放つサメの存在がとても好き。
 ある種の逃避とも取れる描写なのですけれど、そういった解釈はさておき、このサメの存在感そのものがお話の芯になっているような感覚。
 淡々とした語り口と、具体的な逸話の生々しい手触りがたまらない作品でした。