思い出の風船 〜 初恋 〜

ハル

第1話 風船の思い出

スッ


幼い頃の私の手から風船が離れ、木に引っ掛かる。



「あっ!風しぇん…んー、んー…」



一生懸命手を伸ばすも幼い頃の私の身長では届くはずがない。


分かっているけど、当時は意地でも取ろうとする自分がいた。





そこへ―――――




一人の男の子が木に登って行くと、風船を取ってくれた。





「はい!」



無邪気な笑顔で渡す男の子。




「…あ、ありがとう…」

「もう離したら駄目だよ」

「うん!」




男の子は走り去った。





たった1つの風船が


       1つの恋を運んできた




幼い頃の記憶


 

    

       幼い頃の想い



 幼い頃の思い出





         ――――そう――――




一人の男と女が



         風船を機に




恋の扉が開く




      ―――でも――――




幸せか不幸か………




        運命に任せるべきの




恋の物語 ―ストーリー が




             ―――今―――




     始まろうとしていた










私の名前は、遊木怜歌(ゆうきれいか)。16歳の女の子。



「あっ!風船が飛んでる!」と、私。


「本当だ」



私の親友の・奈香松 成弥(ながまつなるみ)が、私の一言に気付き、空に浮かんで飛んでいる風船に目が止まる。


それはある日の学校帰りの出来事だった。





空にフワフワ浮かび


上がっていく風船


きっと誰かの手元から


離れてしまったのだろう?


フワフワと天に昇っていくように


風船が空中に浮いていき


小さくなって見えなくなっていく







「風船ってさ、日にちが経つに連れて萎(しぼ)んでいくけど大きい時って、アピールしてるように見えない?」


私が言った。



「えっ?そう?」

「えっ?しないかな?」

「どうだろうね?私は別に、そうとは思わないけど」

「…そっか……風船…かぁ〜……」



私はポツリと呟く。




「何、しんみりと…何か思い出深いのあんの?」

「ううん。別に」



私達は色々と話しながら帰るのだった。





再びある日の学校帰り――――――




「あっ!風しぇん……」





小さな女の子の手元から離れ風船が上へと上がっていく。


私は目に付き足早に向かったものの間に合わず

しかしながら偶然に木の枝に引っかかった。

 

私は取ろうとしたもののもう少しの所で手が離れ届かない




《もう少しなのに…》 


 



次の瞬間――――




スッと背後から別の手が伸びてきた。


その手は、風船にすんなり届く。




ドキン




《えっ…?》




「はい」




一人の他校生の男の子が女の子に風船を渡す。



「ありがとう!お兄ちゃん!」



満面の笑みを見せ嬉しそうに言う女の子。



「お姉ちゃんもありがとう」


「ううん。でもお姉ちゃんは取る事が出来なかったから。ごめんね」


「ううん」

「もう、離したら駄目だよ」




ドキン



「うんっ!」




女の子は、私達に手を振り帰って行くのだった。





「女の子は無茶しない方が良いよ」




そう言うと、男の子は去って行った。





一瞬、幼い頃の記憶か蘇る。



まさかの偶然?



だけど……




成長するたびに思い出は



日に日に色褪せて



セピア色に変わっていくよね?









ある日の学校帰り―――――





「ちょ、ちょっと!日比生(ひびき)頼む!お前がいなきゃ駄目なんだって!」


「えーーっ!良いじゃん。俺、関係ないし!」

「関係あるから行ってんだよ!」



「………………」




「ああーーっ!」



空を指差す俺。


空に目を向ける友達。



俺は、その隙に走って逃げた。




「ああーーっ!!こらーーっ!日比生ーーーーっ!テメーーーっ!」


「俺、候補者いるから駄目なんだーーーっ!」


「全く…!アイツ…好きな人いるからって…ずっと片思いっつったっけ?」






一方―――――





「あっ!風船下さい!」




着ぐるみに言う私。



高校生にもなって…なんて思われても良い


だって風船は私の思い出が入っている


風船だから――――





「ありがとうっ!!」



私は軽い足取りで帰って行く。




その途中――――





「珍しいね!」




ドキッ


声がし振り返ると同時に私の目の前にストッと木から飛び降りる人影。



「きゃあっ!何故木からなのっ!?あなたはお猿さんですかっ?」


「人間は猿の生まれ変わりでしょう?」




「………………」




「ねえ、風船好きなの?」


「えっ?あっ、うん…好きっていうか…何ていうか…でも、高校生にもなって風船なんてって思うでしょう?」


「別に思わないよ」


「えっ?」



「風船に年齢制限なんてないよ。だって、普通に風船膨らまかして遊ぶ人はいるだろうし。俺も風船好きだし。まあ、割れた瞬間とか、割れる恐怖感は確かにあるけど…」


「クスッ…それはあるかも」


「結局、風船は割れない限り萎んでしまう。ただ、それだけなんだけど。萎んじゃうと何処か寂しかったりして…風船、割らないようにね」




そう言うと私達は別れた。






そんなある日。


私のクラスに転入生が来た。


彼の名前は・石基 雄也(いしもとゆうや)君。



「何もかも分からない事ばかりなんて宜しくお願いしま〜す。あっ!先生、お子様いらっしゃると、おっしゃってましたよね?」


「ああ。一人な」


「好きな動物は犬と、いう事で……はい!どうぞ!」

「きゃ〜♪可愛い〜♪」



女子が騒ぐ。




「スゲーーー!」




《な、何?何が起こったの?》



外をぼんやりと眺めていた私は教室内のざわつきと騒々しさに我に返る。




「だから、さっき尋ねていたのか?」

「はい!ほんの挨拶変わりですけど差し上げます♪」



彼は風船でプードルを作っていた。


彼の人気は高かった。





「ねえ、凄いね」

「えっ?」

「雄也君」


「あー、本当、凄いよね?風船で折り紙みたいに色々作れるの」


「お、折り紙って……」

「えっ?折り紙みたいじゃない?」

「いや…違うような…」



私達は色々と話をした。






そして、ある日の日曜日――――




「あっ!風船だ!下さいっ!」




つい貰いに行ってしまう私。


今日は成弥とショッピング中だった。



「怜歌、何を根拠に風船なんて」


「えっ?風船良いじゃん!つい目についちゃうんだよねー?私」


「どうして?」


「思い出の品だから……」


「品って…」



私達は街を廻り楽しんでいた。






数日後の放課後――――




「遊木って、風船好きなの?」

「風船?あ、うん…好きっていうか…何ていうか…」


「…それは…どう取れば良いんだ?てか、どっちだよっ!?」


「えっ?」


「好きか嫌いか選択は2つしかないから」


「…どっちかというなら好き…かな…?でも、どうして?」


「いや、ちょっと気になって」


「そう?」


「ああ。じゃ」




そして、帰って行くのだった。






それから数カ月が過ぎ―――――



いつもの学校の帰り道で出逢う彼とは顔見知りになっている。


他校生の男の子。


雪野 日比生(ゆきのひびき)君。16歳。同級生だ。


ほぼ、同じ時間帯にすれ違う私達。


毎日のように風船をバッグに付けて帰っているのを目撃されて尋ねられ会話する事が増えていた。




「風船、もう君のワンポイントだね!」

「あっ!日比生君!」

「風船で誰かを探しているの?」


「ううん。そういうわけじゃないけど…ちょっと…思い出深いんだよね」


「へえー」


「もう随分と昔の話なんだけどね。風船見る度にセピア色だった思い出が、カラーになっちゃうんだ。街に出たりすると、つい、風船貰っちゃうんだ」


「そっか…」


「うん」






いつの間にか


この時間が


当たり前のようになっていた





数日後――――



「ねえ、怜華。今度付き合ってほしいんだ」

「うん、いいよ」

「ありがとう」




そして、当日―――――



「ねえ、怜歌。多分、時間かかると思うんだ」

「うん。分かった。じゃあ、終わったら連絡頂戴」

「うん。OK!」



私達は、二手に分かれ別行動を取る。



私はデパートの屋上にいた。




「あっ!風船だ!下さい!」



着ぐるみから風船をもらう。



「ありがとうっ!!」



少しして―――――




「遊木」


誰かが私の名前を呼んだ。



視線の先には……




「うわっ!何してんの?」

「見ての通り風船配布」

「じゃあ、これも?」

「そう!」

「石基君が配っていたんだ!」


「そう。今日は偶々だけど…」

「そうなんだ」

「うん。遊木、一人?」


「ううん。成弥と来てたんだけど、時間掛かりそうって言ってたからバーゲンの掴み取る合いかも?」


「あー、あれは凄いよな?」

「そうだね。私には無理かな?」




私達は、話をしていた。


しばらくして、成弥から連絡入り、私達は合流した。






ある日の学校帰り――――




「怜歌ちゃん」

「あっ!日比生君!」

「今日は、風船付けてないんだ」

「あ、うん」

「な〜んだ…せっかく割ろうと思ってたのにな〜」

「えっ?だ、駄目だよ!!」


「アハハ…嘘だよ。そんなムキにならなくても」

「なるよ!」

「ねえ、時間ある?」

「うん、大丈夫だよ」

「そこに座らない?」

「えっ?」



すぐ近くにベンチがある。


ここは、並木道。


所々にベンチがあるのだ。



私達は、ベンチに腰をおろした。





「ねえ、日比生君は、彼女いないの?」


「彼女?いないよ。俺、気になる人いるから。心残りっていうの?時々、思い出すんだ。恥ずかしい話、多分、俺の初恋だったかも」


「初恋?そうなんだね!」




《初恋か…私も初恋だった気がする…あの頃…》




私は、ふと、幼い頃の記憶が蘇る。




スッ


私の肩に何かが触れる。



ドキッ



振り向くと――――



私の肩に、日比生の頭がもたれかかっていた。




「…怜歌…」



ドキン



「…少しだけ…肩…貸して…」

「…あ…うん…」





名前を呼ばれ


呼び捨てにされたのか


聞こえなかったのかは


定かじゃないけど…………




まるで恋人同士のように過ごす時間



この幸せな時間は……



いつまで続くのだろう……?





私は慣れない事に胸がドキドキと加速する中、日比生君は寝息をたて寝始める。



「えっ?…無防備だな…」



私は微笑む。



「可愛い…」



無邪気な性格でありながら童顔な日比生君。


可愛い感じだから、きっとモテるんだろうなぁ〜


そんな事を思いつつも、たまに吹く風が彼の髪を揺らす。




しばらくして――――――



「ちゃん…怜歌…ちゃん…怜歌ちゃん…」



名前を呼ばれる。


どうやら私も寝ていたようだ。



「あ、ごめん…私も寝て…」




ドキーーーッ


私の顔をのぞき込むように至近距離にある日比生君に胸が大きく跳ねる。



かあぁぁぁぁ〜〜っ!



「…お顔真っ赤だよ?」

「…だって…」

「クスクス…可愛い♪」

「日比生君、可愛いって……」

「えっ?怜歌ちゃん、可愛いよ」

「恥ずかしい…」



私達は少しだけ話をして別れた。





ある日の事――――




「あっ!日比生君だ!」



彼を見掛け声をかけようとした、その時、隣には同じ学校の女の子が日比生君と良い雰囲気で親しそうに話をしていた。




「彼女、出来たのかな?」



私は見て見ぬふりをし、その場を足早に帰るのだった。



その後、しばらくは、そこの並木道に入る直前、その光景が常に脳裏に過り、並木道を走って通る事にした




ある日の放課後―――――



スッ

私の目の前に風船で作られた物が視界に入って来る。

くまさんだ。



「ねえ、ねえ、怜歌ちゃん、どうしたの?」



くまを目で追うと、視線の先には石基君の姿あった。





「…石基…君……」


「最近、ブルーじゃん?ぼんやりしてる感じだし、上の空みたいな?」


「そう?」


「そうそう。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。ほら、やるよ。それで元気が出るなら良いけど。それじゃ」




帰って行く石基君。


そして、その日の帰り、いつもならバッグに付ける風船を手に持って帰っていた。


すると、突風が吹き、バッグに入れてあったくまの風船が落ち、手元からは、もう一つの風船が宙を舞う。




「あっ!風船…」



木に引っかかる風船。


そして片手には、くまの風船。


木に引っ掛かっている風船を一生懸命、取ろうとしている。




「もう少しなのに……」



スッ

風船を背後から誰かが取る。




「あっ!」

「はい」



ドキン



「…日比生…君…ありがとう」

「いいえ。久しぶりだね?」

「…あ、うん…そうだね」


「…あれ?凄い!これ風船で作ってあるんだ!器用な子だね」



風船で作ってある、くまの手作り風船に目が止まったようだ。



「…あ、うん…転入生で来た同じクラスの男の子が作ってくれたの」


「へえー、一つの特技だね」


「うん…」





久しぶりにする会話。


嬉しいような切ない感じ




「日比生君」

「ん?」



この前の女の子の話をしようとしたが、勇気がなかった。



「ううん。何でもない。またね」




私は走り去った。






たった一言なのに


聞けない


一歩踏み出せば良いのに


勇気が出ない




でも聞けたとしても



それは――――



私には関係ないことなのにね……




だけど――――



【彼女だよ】



そう言われるのが


怖かったりする


自分がいる






ある日の放課後の事―――――



「遊木」

「石基君」

「なあ、お前、前に風船好きって言ってたじゃん」

「うん」

「どうして?」



「…初恋の思い出なんだ」

「心残りなわけ?」

「どうかな?でも、風船見る度に思い出しちゃって」


「何処にいるかも分からないのに彼の事、探してんだ」


「…それは…」

「年月は経ってんだし、見付かる保証ないんじゃ?」

「そんなの…」

「悪い…」

「ううん…」




石基君は帰って行った。


私も帰る事にし、ぼんやりとしながら帰る。




「怜歌ちゃん」




名前を呼ばれ、振り返る私。




「…日比生君…」

「どうかした?」

「えっ?…ううん…大丈夫…」

「嘘!何かあったんでしょう?」

「ないよ!平気!」



「………………」



「怜歌ちゃん可愛いんだし、そんな顔似合わないよ!笑顔、笑顔」


「…ありがとう…ねえ、日比生君。日比生君の…初恋の話…聞いても良いかな?」


「えっ?」

「あ、ごめん。私には関係ないか……」



微笑む日比生君。



「良いよ。大丈夫。幼い頃の話だし。あの頃、マセてたから」


「そう?その子とは、その後どうなったの?実は付き合っているとか?」


「付き合ってはいないけど、仲良くしてるかな?でも、実際、その子が初恋の子かは知らない」


「そうなんだ」




《じゃあ、やっぱり…一緒にいた女の子かな?可愛いかったし》



結局、気にはしていたけど、それ以上は聞かなかったと、言うより聞けなかった。






数日後の学校帰り――――




「…日比生君…あの時の子と一緒……」




そして私は自分の想いに気付く。



私はいつの間にか好きになっていた?



いや多分 幼い頃の


あの時の男の子と


照らし合わせていたのかもしれない――――



無邪気な笑顔


彼の面影が


どことなく似ていたのだから―――





ある日、成弥と街に出かけた。


風船をもらい、私は、思い出と一緒に風船を空に飛ばし、忘れることにした。


だけど無理だった。




街に出て


風船を見掛け


結局は


思い出にはならない


カラーのまま






「怜歌、初恋の男の子って、心当たりあるの?」

「えっ?」


「もし、心当たりあるなら、告白したら?でなきゃ先には進めないし止まったままだよ」


「…それは…でも…確定じゃないから…」


「だからこそ告白すべきだよ!違ったとしても、きっと彼の良い所を知った上で好きになったんじゃない?」 


「そうなのかな?」




それから1か月が過ぎたある日の休日。


一人街に出掛け、着ぐるみから風船を差し出された。




「…あ、ありがとう…」



私は渋々、受け取る。




その日の帰り―――――




「あっ!風船…」



私の手元から離れ、いつものように木に引っ掛かる。




「もう…少し…なのに…」




スッ

背後から風船を誰かが取ってくれた。



「あっ!」

「前も同じ様に無理に取ってたね」




ドキン…



「日比生君…」





まさかの偶然。


休日に会う事なんて


奇跡的にすぎない




「風船…本当、好きなんだね?」

「心残りの思い出の風船だから……」

「えっ?」


「忘れようと思って前に、風船飛ばしたけど…結局…忘れる事出来なくて…」


「知ってる。屋上から飛ばしてたよね?」


「えっ?知って…」

「うん。偶々、見掛けたから」

「そっか……日比生君…その風船あげる。それじゃ」

「待って!」



グイッと引き止められた。


ドキン



「心残りとか、思い出とか…って…」

「…日比生君…思い出の男の子かな?って思ってた…」

「えっ?」



「無邪気な笑顔が印象的で…会って話す度に…あの時の男の子に似てるって…そうしたら、いつの間にか好きになっていた。でも…日比生君には彼女いて違ったんだな~って…」



「…怜歌…ちゃん…」



「私…遊木怜歌は、雪野日比生が大好きです。でも、思い出の男の子なら、尚更、良かった……ごめん…それじゃ…」



私は足早に去った。




「あっ!怜……」




彼が呼び止めるも、私は去った。




それから1か月が過ぎた、ある日の事。


私は風船を片手に、いつもの学校の帰り道を帰っていた。



突然の突風が、私の持っていた風船が飛んでしまった。





「あっ!」



フワフワと宙を飛んでいく中、追い付けない私は半ば諦めかけていたが、偶然に引っ掛かった。


私は風船を取ろうと手を伸ばす。




「…もう少しなのに…お願い…届いて…」




「一人の少女が…」






ビクッ

突然の声に驚く私。




「風船を片手に帰っていました」


「えっ?」





周囲を見渡すけど人の姿などなく声だけが聞こえる。




「でも、突然の突風で、少女の手元から風船が離れてしまったのです。そして、木に引っ掛かっている。風船を一生懸命に取ろうとしている少女を見て少年は木に登り取ってあげました」




ストッ

私の前に人が降りる。





ドキッ


「…日比生…君…」


「そして、少年は、こう言いました。……もう……離したら…駄目だよ……と」



ドキン…



スッ

私の手をとり風船を渡された。



ドキッ



「…そして…風船を渡すと、その少年は走り去って行きました」


「…日比生…君…」




「…………………」




「君が、あの時の女の子なら、俺は、あの時の男の子。そして、セピア色だった俺の思い出も今じゃ、もうカラーのまま。そう…君と…出逢ったあの日から俺はずっと…あの時の女の子を目で追っていた。もう成長しているけど俺はすぐ分かったよ。君が、あの時の女の子だって…一生懸命さは変わっていない」



「本当に…本当なの…?」

「うん。そうだよ」

「信じて…良いの?」

「うん」



「…………………」




「あの日から、ここを通る度に俺はいつもカラーに変わっていた。街でも着ぐるみが渡している風船も俺にとっても、いつも思い出を蘇らせる光景だった」





ポロッ

涙がこぼれる。




私を抱きしめる日比生君。


私はそれに答え抱きしめ返した。



その瞬間、風船は私の手元から離れ上へ上へとあがっていく。




「それと…彼女はいないよ」

「えっ?」


「告白はされたけど、好きな人がいるのは伝えてあったし、その子には、今、彼氏がいるから。だから安心して。それと、改めてよろしくね。怜歌」




ドキン…



「う、うん……」




日比生君は、私のオデコにキスをした。




「怜歌も、呼び捨てでいいから」


「うん…」







〜 E N D 〜





























































 














 





















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