ふえた

@18bai_kaiohken

ふえた

すみません、また最近急にいろいろとモノが増えてしまって。ごちゃついていますけど、どうぞゆっくりしていってください。


ああ、そうでしたね。私が経験した話についてでしたっけ。



いや、別に幽霊とかそういう類の話ではないのであまり期待しないでほしいんですけどね。




あれは私がまだ小学生だったころの話です。


私の通っていた小学校は、終業式の日に必ず大掃除をすることになっていたんです。


普段の掃除では机とかは教室の後ろに寄せたりして、空いたスペースを雑巾がけするみたいな感じなんですけど。


でも大掃除の日だけは教室中のすべての机を廊下に出してしまうんです。ええ、たしか教室の床をワックスがけするためだったと思います。


それで廊下に机を出したまま、つまり教室の中には机が一つもない状態で夏休みや冬休みを迎えて、休み明けの最初の登校日にみんなで廊下の机を教室に戻すんです。






たしか、初めてそれに気づいたのは3年生の冬休み明け最初の登校日のことでした。


その日私は珍しく遅刻してしまって。教室についたのはホームルームの始まる直前でした。だから教室についたときにはすでに、廊下においてた机がすべて教室にもどされてたんですけれど。



1つ増えてるんです。机が。



その時の私の席は教室の一番後ろで廊下側から2列目、つまり教室の後ろのドアの近くだったんですけど、クラスの人数が奇数だったので、私の右隣の席、つまり私の席と廊下に挟まれた場所は空席で、もともと机そのものが無かったんです。



その何もないはずの場所に机が置いてあったんです。


隣のクラスの机を間違えて持ってきてしまったのか、それとももしかして転校生が来るのかな、なんて席に着いて考えてるうちにチャイムが鳴って。



みんなが各々の席に着く中、私の方に1人歩いてくる気配がして、そのまま私の隣の席に座りました。



クラスの友達の悪ふざけかなと思い、私の隣の席を見たんです。



座っていたのは、見覚えのない子でした。



その時の私は、

ああ、やっぱり転校生か。何かこちらから話しかけたほうがいいかな、みたいなことを考えていたと思います。



そしたら向こうから突然、



「アイリちゃん、おばあちゃんち楽しかった?」



って話しかけてきたんです。ああ、アイリっていうのは私の下の名前です。


でもその時、子供ながらに強い違和感を抱いていました。だっておかしいでしょう。初めて会うのに向こうは私の名前を知っていたんですから。それに冬休み中おばあちゃんちに行くということもクラスの友人の何名かにしか話していなかったので、その子が知っているはずないんです。



私が困惑しているうちにホームルームが始まりました。転校生なら黒板の前で自己紹介とかするのかな、と思ったのですが、結局、私の隣にいる子が自己紹介をすることはなく、先生は淡々といつも通り生徒の出欠をつけていました。



そのことをなんだか気味悪くなった私は友達に、「あの子って転校生だよね、私の隣の席にいる子」って聞いたんです。そしたら、



「え、ミキちゃんのこと?なに言ってるの、アイリちゃんの幼馴染じゃん。この学校でもずっと仲良しだったでしょ」



でもそれはおかしいんです。私は家から少し離れたところにある私立の幼稚園の出身だったので、小学校の友達はみんな小学校からの付き合いだったんです。だから私には幼馴染とよべる友人はおらず、当時の私はむしろ幼馴染という存在にあこがれていたほどでした。



身に覚えのない幼馴染の存在が怖くなった私は、初めのうちはミキちゃんを避けるように生きていました。



でも、周りの友達も、先生も、私の両親でさえ、ミキちゃんは昔から私の幼馴染だ、っていうんです。



よく一緒に遊ぶ友達のグループには必ずミキちゃんがいたし、家にあったアルバムにも、小学校に入る前であろう私とミキちゃんが一緒に写った写真がたくさん収められていました。



まるで私だけが大切な幼馴染であるミキちゃんを忘れてしまっているのではないか、とさえ思えてくるようでした。



そんな日が続いて、もはや耐えきれなくなった私は、ある日ミキちゃんに直接聞いたんです。なんで私たち幼馴染になったんだっけ、いつから幼馴染だっけ、って。


そしたらミキちゃんは急に無表情になってこちらをじっと見ながら





「そうしたのはアイリちゃんでしょ」





とだけ言いました。



そこで私気づいたんです。ああ、悪いのは全部わたしでミキちゃんは被害者なんだ、って。



それからはミキちゃんとは仲良くしています。今もちょこちょこ連絡を取ったりしていますよ。




あれからもたまにそういうことがあって、三年前に出会った今の夫とは結婚してもう10年になりますし、一昨日授かった三人目の息子は来年小学生になるんです。






そういえば、あなたとはいつからお知り合いでしたっけ。





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