最終話

 後日。


 いつものように準備室で昼飯の準備をしていると。


 ドタドタドタと、これまた忙しい音が聞こえてくる。

 バタ、と扉を開けて纏愛が準備室に顔を出して。


「ミッチー! ちょっとこっち来て!」


 と言う。

 何があったのか。


 俺は準備室の扉を開け、理科室へと戻る。

 すると、そこには纏愛以外に、もう一人。


 女子生徒がいた。

 たしか、あの子は――。


「この子! 今日から私の友達だから!」

「え! なんですかそれ!?」


 いきなり嚙み合わない報告に、俺は頭を悩ませた。


「知らないの? 友達っていうのは――」

「そこじゃないです! 友達って言葉は知ってます! なんで私と小鳥遊さんなんですか!」

「え、だって仲良くなりたいから」

「い、意味の分からない理屈で答えないでください!」

「そっちが訊いてきたんじゃん! こっちは真面目に答えてるのに!」


 なんだなんだ。

 どうしたってこいつはいきなり――。


「と、とにかく! 私はそういうのじゃないですから! 失礼します!」

「あ、逃げるな!」


 二人で一言ずつ、理科室に置いて。

 廊下を駆け出して行ってしまった。


「なんだったんだ、あれは……」


 頭の後ろをぽりぽりと掻きながら、俺は準備室へと戻った。


 あの調子なら、纏愛が捕まえて、どこか二人で昼食を取るだろう。

 久しぶりに、一人で昼休みを過ごすことになった。

 しかし、不思議と、以前とは違う感覚に陥った。


 今日は一人でも、明日はそうじゃない。


 そう思うと、なんだか心強いというか、なんというか。


「はぁ、こりゃまた、作戦会議だな」


 俺の教え子である小鳥遊カンタの娘、小鳥遊纏愛。

 彼女との日々は、まだまだ続きそうだ。




【追記】

 ここまで拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。あとがきのようなものを、近況ノートに書いてあります。良ければそちらも読んでくれると嬉しいです。

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10年後に教え子の子供が教え子になる話 ひみつ @himitu0303

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