最終話 課題クリア、そして――

 リアの試験まであと5日。

 メイド長やスペース様の許可もどうにか下りて、わたしはリアの専属メイドをすることになった。

 メイド長もスペース様もすごく驚いてたけど、わたしの熱意に負けたみたい。


 とは言っても、私が起きて部屋に行くと、リアはもう顔を洗って着替えを済ませ、勉強に取り掛かっている。

 だからわたしは、リアがやっていた仕事を肩代わりしながら、食事の時間にはリアに食事を運ぶ、ということになった。

 夜食には、焼きおにぎりを作って持っていこう。


 たった5日間。

 それくらいならわたしでもできるよね! だってもう中学生だし!

 ――そう思ったんだけど。


 家での家事はほとんどお母さんとお父さんがやってたし、ここに来てからもずっとリアに任せっぱなしだったわたしに突然家事ができるわけもなく。

 結局、1日が過ぎたころには任せてもらえる仕事はだいぶ減っていた。

 家事って、こんなに大変だったんだ……。

 洗濯物がこんなに重いなんて知らなかったよ……。

 地道な仕事で生活は成り立っている、ということを身をもって知る結果となった。


 でも、わたしはほかのメイドさんたちの手を借りながらも、どうにか5日間仕事をやり遂げた。

 仕事は失敗も多くて、お世辞にも有能とはいえないぽんこつだったと思うけど。

 でも夜食の焼きおにぎりだけは、【魔法空間師見習い】として欠かさないようにした。

 わたし、今までずっとリアに支えてもらってたし。


 そうして大変な5日間はあっという間にすぎて――


「ソラ様、お仕事代わってくださりありがとうございました! 本日試験が終わりましたので、今日からまた仕事に戻ります」

「試験お疲れさま! まあ、わたし結局大したことできてないんだけどね」

「そんなこと! 私、合格したらいつかソラ様の補佐役になりたいです」


 ああもう、そんなこと言わないで。泣いちゃうじゃん!

 でも、そんな日が来たら嬉しいな。


「本当よくやりますわね……。突然メイドになるなんて、何事かと思いましたわ」

「本当ですよまったく。まあ、ソラらしいですけど」

「えへへ」


 エリヤもゾーンも最初は反対したものの、結局は呆れながらも笑って見守ってくれたし、少しだけど手伝ってもくれた。

 本当に、2人ともいい仲間だと思う。


「――さて、無事全員試験もクリアしたことだし、次会うときは2年生ね」

「はいっ。リオン先生、この1年ありがとうございました。来年もよろしくお願いしますっ」

「こちらこそ。来年も、今年の比じゃないくらいに授業も課題も山積みよ。覚悟してちょうだいね」

「えーっ!!」

「まったく、ソラはやる気があるのかないのか分かりませんね……」

「うふふ。来年も楽しい1年になりそうだわ~」


 最初は嫌々、強制的に始まった【魔法空間師見習い】生活だけど。

 こうして、わたしたちは無事1年生を終えることができた。

 わたし、少しは成長できたかな?

 来年はどんなことが起こるんだろう?


 これからも、きっと大変なことはたくさんあるけど。

 でもそれでも今のわたしは、「みんなと一緒に立派な【魔法空間師】になって、【悩み人】を癒したい」って心から言える。

 わたしの中にある《魔法空間》はまだまだ生まれたばかり。

 次はどんな【悩み人】の、どんな悩みに出会うんだろう?


 期待に胸をふくらませて外を見たそのとき、わたしたちを祝福するかのように、《修練の城》のベルが鳴った。


【完】

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