親友との色褪せない思い出

 とある女性が、今は亡き親友についての思い出をただ語る物語。

 少し先の未来を舞台とした日常ものSFです。

 淡々と過去の足跡を綴る中で、でもある種の悲劇的な行く末(=彼女が現在はもう亡くなっていること)と、その後の偏執的な現状(=その彼女をAI化して一緒に暮らしていること)だけが異彩を放っているところがとても好き。
 そして、それが冒頭にポツンと予告されているところも。

 この穏やかな語り口に対しての〝この現状〟の、なんとも言えない不思議な威力……。
 静かな中に確かに感じる、強く烈しい思いのようなものが楽しい作品でした。