第九話 霊障というもの ―― 重さ
不定期更新とはいえ、ちょっと間が空いてしまいました。
本当は書くネタは他にもあるのですが、実体験は書くのにはちょいと気力がいるもので……。
(でもいつか書いて浄化したい、ジレンマ)
で、今回は人から聞いた話とか、負担軽めの話を書いてます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
よく心霊番組などで、取材中にレポーターもしくはスタッフの肩が重くなったとか、気分が悪くなるとかいうアクシデントが起きることがある。
気分が悪くなるのは普通にありそうだとして、体が重くなったとか、痛くなったとか、そういった症状もただの思い込みじゃないの? と思われる人も少なくないかと思う。
ちょっと肩が重くなったりって、気のせいでしょ? と、そういった現象とは無縁の人はテレビ越しに思ったりするのじゃないのだろうか。
実際に先入観や集団暗示などで、本当は何でも無いのに具合が悪くなる場合はあると思う。
では具体的にどのくらいの重さを感じるのか。
個人差がかなりあるので一概には言えないけど、例えば頭にいきなり広辞苑が置かれたくらいの体感と言えばわかりやすいだろうか。
え、そんなに? と思うか、もしくはそれぐらい? と思うか様々だと思うが、これくらいの重さを瞬時に感じるとなるとただの気のせいとは思えないだろう。
しかも起こった時と同じように、スッと消えたりするのだ。
ただし慌ててお寺とかじゃなく、まずは病院へ行ってくれ。
血管とかがヤバいのかもしれんから。
で、今回はタイトル通り、霊障の場合なのだが、感じる重さはマチマチ。
その時に障害を起こしている霊の重さ次第というわけだからだ。
ここでふと考える。
霊の重さって、生きてた頃と同じ体重を感じさせるのは何でだろう?
だってもう肉体というこちらの物理的な物質はないのに、それを何か特殊機械も使わず感じるというのは、これまたあらためて不思議と思うのは私だけか。
もしかするとどこかで解説されているかもしれないのだが、見つからなかったのでとりあえずこのままいってみよう。
魂の重さは21g という説がある。(もちろんこれも1つの説に過ぎないが)
21g というと、昔ウチで飼っていた白文鳥よりも少ない重さ。ヘタをすると乗られても分からない軽さ。
なんだけど、実際はそんな小鳥サイズじゃなく、明らかにズシンと来るのだよ。
例えば猫なら2~5キロぐらいとか、鳩やカラスなら300~600gぐらいか。
(鳥は第四話で体験済み)
そしてこれは偶々だったのかもしれないが、体がミイラ化したりしていると重さもそれなりに軽くなっていたりするようだ。
例えば体が半分なら体重も半分とか。
推測だが、死体の形状に霊体もなってしまったりするのだろうか。
なんでそんな事を考えるのかというと、体験したことがあるからだ。
私が高校生の頃、三話にも出てきた霊感少女Aちゃんと他2人の計4人でよくつるんで遊んでいた。
ある休日、みんなで街歩きをしていて、ぶらっと区立博物館に入った。(我ながらなんて健全なんだろう)
確か入館料がタダ(もしくは百円程度)だったからなんじゃないかと思う。
そこには一般的な土器やら昔の地図、または剥製などが展示されていた。
小さい博物館、それなりの展示物である。15分もいないで外に出たと思う。
確か夏だった。
そこで私達は近くの公園によって、アイスクリームを食べることにした。
ベンチではなく、ちょうど丸椅子ぐらいの円柱が、ポコポコと5,6個置いてある日陰で輪になって座った。
突然、頭が重くなった。
というか、頭の上に何か重たい物が乗っかって来たというのが正しい。
えっ! ナニこれ?!
見ると皆も一斉に驚いた顔をしながらも、やや頭が前に垂れ気味だ。
「……あ さっきの博物館から連れて来ちゃったみたい……」
Aちゃんが顔を顰めながら言った。
他の2人はAちゃんの影響で霊感が覚醒。
なので黒っぽい靄のようなモノが、それぞれの頭の上に垂れるように乗っかっているのが視えたらしい。
幸い私は霊感が鈍感だったので、そんなモノを見ないで済んだが。
ハッキリ視えるAちゃんによると、先程の博物館で展示されていた剥製たちだと言う。
え、剥製に憑いて残ってるんじゃ、全国の博物館って、ヤバいんじゃないの?
――ご安心ください。
Aちゃんによると今回はたまたまだという。
彼らによると『食べる為に殺されたのなら仕方ないが、標本にされるためだけに殺されたのは納得がいかない』というような事を言っているらしいのだ。
おそらくだが、この剥製を作った職人はお金のためだけにぞんざいに、動物たちの死体を扱ったのかもしれない。
山で猟師が狩った獲物に対して命を頂いたことに敬意を示すとか、そういった事は一切なかったようだ。
そこへちょっと霊感の強い者――存在に気づく者――がやって来たので、憑いてきてしまったというわけだ。
迷惑なんだが、向こうも憤りの矛先がなかったというわけか。
ちなみにみんなの上に乗っているのは、鹿や狐などの森の動物たちらしい。
そうして何故か私だけ、アマゾン川のピラルクーもどきの川魚。
後から思うとあんなに大きくなかったから、シルバーアロワナだったのかもしれない。
その1mくらいの魚は頭から後ろが半分に削がれ、中が見えるように半身になっていた。
確かにジロジロ見てたか、私。
「グロいから視えなくて正解だよ」とAちゃんは言った。
つまりあの展示品通りの姿のが、私の頭の上に乗っているという訳だな。
視えないし、魚だからこういう時にもグロさを感じない私。でもやっぱり迷惑。
「そりゃあ気の毒だけど、もうこうなったらここでグダグダ言ってないで、さっさと生き返ってやり直したほうがずっと良いのに」
と、つい無責任な発言をボソリと言ってしまった。
すると本当に、フッと頭が軽くなった。私だけでなく4人全員だ。
4匹ともいなくなっていた。どうやら私の言葉を素直に理解してくれたようだ。
む~ん、さすが動物&魚。自然界の生き物である。
人間だったらこんな素直に意見を受け入れないだろう。
おかげで4人共こんな目にあったのに、なぜかほっこりして終わった。
もうウン十年前の話である。
四匹はすでに無事に生まれ変わっていると思いたい。
とにかくこの時に感じた重さが私の場合、急に頭に猫が乗って来たといった感じだった。(無理やり可愛い絵面にする)
いや、米袋の方が近いかもしれない。
本など硬くてカッチリしてる形状のものが頭の天辺に置かれたのじゃなくて、もっとグッタリしてるモノだから、感じる面積も広いのだ。
なんにしてもなんで肉体がないのに、重さは生前(または残った形状)と変わらずに感じるんだろう。
普段、霊体が視えないのはこちらの世界と波動が違うからという説があるが、重さも波動関係なのだろうか?
無重力でも質量は変わらない。
だから宇宙空間でもネジを一個押すのと、宇宙船を押すのとでは使うエネルギーは全く違う、というのと似たような法則みたいなもんがあるのだろうか?
色々と分からないことだらけだが、とにかく見た目と同じくらいの質量はあるのかもしれない。
そういえばよく、誰もいない部屋から音がするという話がある。
無人の廊下や階段をギシギシと歩く音とかがポピュラーだ。
無生物の物質にも、霊体の質量はかかるのだろうか?
それとも故人の生きていた時の記憶の残影がこちらの世界に響いて来るのだろうか。( 個人的にここは残穢とは使いたくない。なんでもかんでも穢れとは限らないので)
もしこれが口で言っていたなら、生きている人間でもヤバいレベルなのだが。
ふと思い出したが、以前 寝ている時に顔のすぐそばで話しかけられ、目を開ける瞬間に気配が消えたことがあった。
その際に低反発枕の顔のすぐ横を、凹みが戻る感触がハッキリと伝わって来た。
あ……、そこにいたのか。
物質にも作用するということは霊体じゃなくて、 幽体・オン・ザ・幽体 なのかもしれないなあ。
ちなみにこれは知り合いの○○さんなので、ご安心を。
逆に変な言い方をすれば、昼寝をしているところに飼い猫がちょっかい出してきたみたいな和み感がある。(いや、何言ってんだろな、私)
そもそもこれは霊障じゃないし(笑)
最後に。
最近数年ぶりに会った人が、実は霊感持ちだというのを初めて知った。
その人から聞いた話を一つ。
*
知り合いの提灯屋さんが、ある山に建つお寺に注文の提灯を納めに行った。
途中から車は入れずに山道を歩く。
品物はそれほど重くないので苦にはならないはずだったが、途中から急に足が重くなってきた。
まるで泥の中に足を突っ込んだようである。
そうしてあともう少しでお寺というところで、今度は肩や背中が恐ろしく重くなった。
たまらず提灯屋さんは、とうとうその場に手をついて一歩も動けなくなった。
だがちょうどそこへ、若いお坊さんが出迎えに来てくれた。
「……何故か急に体が重くなって、動けないんです」
提灯屋さんは困惑しながら、そうお坊さんに伝えた。
すると若いお坊さんは眉も動かさずにこう言った。
「それは重いでしょう。三人乗ってますから」
*
そのお坊さんにその場で除霊してもらい、事なきを得たそうだ。
こう聞くと、やはり重さはダイレクトに作用するのか。
書いていてふと思ったが、こういう事象が妖怪オバリヨン(負んぶお化け)
の元になってるんじゃないのか?
なんだかありそうである。
夏だ! お盆だ! 金縛りだっ! てやんでぃっ!! 青田 空ノ子 @aota_sorako
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