Ep.12:登校してみれば
退院した翌日は一睡もできていなかったから体が痛むと教師には嘘を告げて休んだ。うちにいた彼女達は僕がホントは寝不足で休んだ事を知っている。
彼女達の登校前には布団もソファーベッドも片付けられていて、折りたたみのテーブルも使って六人で朝食を食べた。お昼はお弁当を作ってくれている。
最初に登校するのは
口々に『いってきます』を僕に言ってくる。僕も『いってらっしゃい』を返すんだけど、なんか不思議な感じ。
皆んなが学校に行っている間に僕はひとまず眠りにつく。一時過ぎに目を覚まして
その後は部屋やお風呂の掃除をしたり、洗濯機をまわした。
こう言うと何事もなく平和に過ごしている様に思うだろうけど、ハプニングは起きた。主に
僕の洗濯物に何故かブラジャーが紛れていた。それもサイズ的に
まあ、流石に今回のこれが最初という訳じゃないので、最初の頃よりは動揺しなくなった。
「ただいま」
「おかえり」
夕方、
「ん〜、なんか不思議。帰ってきたら『おかえり』って言われるの」
「そうだよな」
「そうね」
「うん」
「そうだね」
この日は
特に何かが起こることもなく一日を終えることができた。あ、部屋は元通り引き戸をはめて僕のプライベート空間は戻ってきてます。
翌日になり皆んなと登校する。
ほんの少しの間だけ休んでいたんだけど、僕が教室に入ると周囲から視線が集まる。居心地が悪いなあ。
「
「誰、それ?
本気で誰の事か分からない。でも、僕と喧嘩したっていうとあの時のアイツらか。そう思うと怒りが込み上げてくる。気がする。
因みに声をかけてきたのは
「この前、部活が終わって職員室に部室の鍵を返しに行ってたら中に入れなくて、それに教室を見たら机も椅子も滅茶苦茶になってるし、その日の途中からお前、学校休んでたし、休む前にお前と
どうだ、この推理力と言わんがばかりのドヤ顔に呆れる。
「喧嘩はしてないよ、僕が一方的にやられただけ」
「そうなん?」
「そうそう、僕が喧嘩、強そうに見える?」
「見えないな」
「そうでしょ」
「なんだ〜、実は喧嘩が強いとかの方が面白かったのに」
楽しそうにそんな事を言うが勘弁して欲しい。
そんな話を
話の中心は僕が休んだ理由と教室の机や椅子が空き教室にあった予備のものと交換されていた事についてだった。
彼女達の事には触れない様に言い訳をする。
僕がこのところ彼女達四人と仲良く交流している事は周知されているので、
昼休みになると僕のところに彼女達がやって来る。今日は
僕たちは時々中庭を利用しているのでレジャーシートも持参している。あまり大きい物じゃ無いけど四枚もあれば余裕を持って座れるし、片付ける際にも手間は少なくて済む。
流石にベンチの周りには生徒がいるけど、中庭の中央にある大きな桜の木の下には誰もいない。今日はその桜の木の下にレジャーシートを敷いて陣取る。
「桜の季節にこうしてお弁当食べたいね」
今の時期だと日陰はまだ良いけど、日向だと動かなくても汗が滲んできそう。
「先にご飯を食べようか?」
そう切り出したのは
「そうだね」
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
皆んな口々に『いただきます』を告げてお弁当を食べ始める。
「ホントに
僕達のお弁当をまじまじと見て
「まあ、同棲みたいなもんだしな」
ニヤッと笑って
「同棲じゃなくて共同生活だからね!」
すぐに
そんな馬鹿話をしながらお弁当を食べ終えたところで
「
「え〜と、
「
そうなのか、それなら美化されて伝わってるといけないので僕からも。
「僕はお礼を言われるような事はできてないよ。あの時も僕がもっと早く目を覚ましてればと今でも思ってるし、結局、僕一人だと何もできなくて、
「それでも、やっぱり
「そういう事なら、分かったよ」
「そろそろ、昼休みも終わるし教室に戻ろうか?」
「そうだね〜」
「だるいなぁ」
「次、なんだっけ?」
「現国」
「寝れないな」
そんなだらけた会話を交えて片付けを済ませて教室へと移動を開始した。
若干の睡魔に襲われながらも午後の授業を乗り切って放課後を迎えた。
放課後になるといつもの様に皆んなが集まってくる。筈だったのだけど、
「
「そうだね」
「もう少し待つ?それとも迎えに行く?」
あんな事がまたあるとは思いたくない。けど、いつもとは違う事があると不安になってくる。だから———
「迎えに行こう、いつもと違うのはやっぱり不安になる」
一応、『連絡とれる?』とメッセージを送る。
僕と
僕達の位置から
「
思わず彼女の名前を呼ぶ。
パッと彼女が振り向く、その表情は安堵を含んだものに見え、僕達は彼女の元へ足早に近づく。
「あ、彼氏が迎えに来ちゃったね。じゃあね」
ひらひらと手を振って
「大丈夫?
「うん、この前の事、今頃になって噂が広がってるみたい」
スマホには
その中に
多分、僕は難しい顔をしていたんだろう。
「
「あっ、ごめん、なんか無神経だなって感じて……」
「
「でも、それだと
「まあ、私らは今更だしな。それに
「
僕はグッとサムズアップしてみせる。
「男前はよせよ、これでも女の自覚はあるんだからな」
僕たちは笑いあって皆んなの待つ教室に戻った。
告白してくる彼女達の事を絶対に信用しない僕 〜嘘告を繰り返された僕は『嘘告マイスター』になった〜 鷺島 馨 @melshea
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