第4話

「2人とも久しぶり!」


「「え?」」


2人は聖女の服装をして椅子に座っているハルを見ると、少しの間を置いて反対方向を見て小声で話し始めた。


「……カケル、僕達さっきこの部屋で聖女様と会えるって言われたよね?」


「あ、あぁ確かにこの部屋で聖女様に会えると聞いたんだが…」


「私が聖女ですからね」


「「「……」」」


「……カケルごめん。僕、厳しい訓練のせいでどうやら頭がおかしくなったみたい。1回僕を殴ってくれないか?」


「…奇遇だなヒロト、俺もクソみたいな訓練のせいで頭がイカレちまったみたいだ。俺も殴ってくれると助かる。」


「なんで2人とも私が聖女になっててはおかしいみたいな反応をするんですか!?

というか私を無視して2人だけで話すのやめて貰えませんか!?」


椅子から立ち上がってその場で地団駄を踏みながら怒るハルの声を聞いて、2人は渋々振り返る。そして2人とハルが顔をしばらく見合わせたあとカケルが話し始めた。


「まさかハルが聖女になってるとは思わなかった。正直とても驚いているよ。」


「私もまさか聖女に選ばれるとは思っても見ませんでした。ですが聖女と言いますがまだなって2週間も経ってませんからね。」


「そうみたいだな。まあ、改めてハル今回の訓練の件、感謝している。」


「僕からも。訓練の内容とか色々と。」


「「ありがとう」」


2人は感謝の言葉と同時に頭を下げた。

ハルは慌てながら体の前で手を振り


「い、いえ私は当たり前のことを下までですから、頭をあげてください。第一2人とお会いすると通して頂いたのは2人と会って久しぶりにお話をしたかっただけですから...」


そのハルの言葉を聞い、2人はゆっくりと頭をあげた。


「それでもだよ、ハルは僕たちの恩人だよ。あのまま訓練が続いていたら僕達の心が折れていたかもしれない...」


「ああ、俺たちだけじゃなく他の候補達も救われた。感謝しかない。」


「えっと、その...そ、そんなことよりも今後の話をしませんか!?」


2人の姿を見てあたふたとしているハルを見て2人は笑っていた。


「ははは、そうだな。褒められ慣れていないハルを見ているのは楽しいが今後の話に移るか」


「あはは、うん。これ以上ハルをいじめたらハルが茹で上がりそうだしね」


「私をイジるのは辞めていだだけませんか!?」




————————




「お、おほん!それでは今後の話を致しましょう。今後の勇者候補の皆様には訓練をして頂くのはこれまでと変わりませんが週に1度の休みを取って頂くと同時に、実戦経験を積んでいただく為に訓練の中で魔物の討伐をして頂くこととなります。」


「魔物討伐?けど、確か王都周辺じゃ魔物はここ2年ぐらい一切出没していなかったんじゃなかったっけ。」


ハルの話に疑問を持ったヒロトがハルに質問した。2年前を境に王都周辺での魔物の出没が一切報告されなくなったと聞いたことがあったからだ。しかしそれは王都だけの話では無かった。王国全土にてこれまで魔物の出没報告が全体的に少なくなってきており、王国と戦争をしてきていた魔族の国からの侵攻も2年前と同時にピッタリと止まっている。ヒロトの疑問にハルが答える。


「ええ、ですので王国は地方で出没した魔物を捕獲して地下に確保しています。皆様にはその魔物と戦ってらい実戦を経験してもらいたいのです。勿論、安全策として候補の皆様が危険と思われる状態になった場合、すぐに衛兵が出て討伐して皆様を守って貰いますし、衛生兵と治療魔法を使える魔法使い、そして私も待機する予定です。」


「なるほど...」


ハルの話を聞いてカケルは少し引っかかっていた。


(魔物の捕縛はたとえ弱い魔物でも無理となっていたはずだ。なのに捕獲できているというのはどういうことだ?)


魔物はどんな弱く知能が低いとされているでも捕獲されそうになると自ら命の源となる『核』を破壊する。魔物の体自体にトドメを刺しても『核』自体が壊れることはないが核が破壊された魔物の体は塵のようになって消えることから捕獲することはこれまで不可能とされていた。

しかし王国は魔物の捕獲に成功している。カケルはそこに疑問を持った。


「ハル、その魔物はどんな魔物なんだ?これまで魔物はどんなに弱い魔物でも捕獲出来なかったはずだ。」


「どうやら魔物の『核』の破壊を防ぐことができる魔道具がこの度開発されたそうです。それを使うことで今回の魔物捕獲に繋がったそうです。魔物についてですが...弱い魔物としか聞くことが出来ませんでした。」


「……」


「カケル?なにか気になるのですか?」


「その魔道具について王国は公表しているのか?」


「い、いえ機密情報という事でしたので...」


(機密情報ならなぜハルに教えた?たとえ聖女であるとしても子供にそう存在自体を簡単に教えていいものでは無いはずだ.....その魔物は警戒すべきなんじゃないのか...?何かがおかしい気がする...)


「2人とも聞いて欲しい。その情報自体もそうだが、訓練用に用意されているらしい魔物は警戒しておいた方がいいかもしれないと思う。」


「え?どういうこと?カケル」


「その魔道具自体新しく開発されているのなら普通は存在自体を公表してるはず。なのに王国は公表をしていないのはおかしいと思うんだ。」


ヒロトとハルは少し考える素振りをし、少ししてからカケルの方を向いて


「確かに警戒しておいた方がいいかもね。魔物自体危険な生物なんだし、しかもカケルは何度も魔物を倒してもいる人だからね」


「そうですね。私も警戒しておくことにしておきます。」


カケルは2人が警告を聞いてくれた様子を見て安心したようにため息をついた。


「2人共、ありがとう。」


「気にしなくても大丈夫ですよ。2人とも他に質問などありますか?」


ヒロトとカケルはハルの言葉に首を横に振る。


「でしたら、難しいお話はここまでに致しましょう。それより、2人は今度のお休みは何か予定など入っていますか?」


ハルの質問にヒロトとハルは顔を見合わせる


「いや、俺は特にないかな。」


「僕もないよ。」


「でしたら、久しぶりに3人で街へ出て遊びませんか!?2人が村から出たあと1人では寂しかったですし、私、久しぶりに3人で遊びたいんです!」


興奮したように2人を遊びに誘うハルを見てヒロトは微笑み、カケルは苦笑していた。


「王国の聖女様はどうやらお転婆みたいだな」


「だね、村にいた頃のハルと何も変わってないみたいだよ」


ハルを見てそう言いながら笑う2人にハルは怒ったように、そして恥ずかしそうに言い返す。


「いいではないですか!2人の前で取り繕う必要もないでしょうし、会えて嬉しいんですもん!それで、2人はどうするんですか!行くのですか?行かないのですか!」


「僕は行かせてもらうよ。僕たちがついて行けば聖女様の護衛にもなるかもしれないし、ハルの目役も必要だろうからね」


「ははは!違いない、勿論俺も行くよ。ヒロトだけじゃハルを止められるか分からないしな」


「もー!2人ともなんなんですか!」


(こんなに楽しく思ったのは久しぶりだな....)


カケルは心の中でそう噛み締めてい





———————————————————


もう少しで曇らせに行く予定です()

曇らせに行くまでなげーよと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが少しの間お付き合いくださいm(_ _)m


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