第3話

王都へ来たカケル達を待っていたのは3000人以上にもなる勇者候補として集められた12歳の少年たち。そして、その少年たちを出迎えたのは劣悪な環境、厳しい訓練だった。

朝早く空がくらいうちに起こされ、訓練場へ呼び出されては教官役の衛兵達からの訓練と称された暴力が続いた。

朝ごはんを貰うことも無く、休憩時間も貰えず、それは太陽が真上に登りきるまで続き、やっとのことでそれを耐えきってもご飯として出されるのは拳1つ分の大きさの固くなり始めているパン2つとコップ一杯の水だけであった。

そんな生活が1週間続いた頃から脱走する者がではじめた。中には過労や脱水症状により訓練から外れる者、教官へ歯向かい骨が折れるまで暴力を受けた後に故郷へ返される者が出続けた。そして1年が過ぎた頃には3000人以上もいた勇者候補は半数まで減っていた。


「こんなことを続けていて本当に勇者になれるのかな...」


ヒロトがそう呟く。そのつぶやきを聞いていたカケルは


「魔族や魔王との戦いになればこれ以上厳しい状態が続くかもしれない。こんなことで勇者になりたいって気持ちも保つことが出来なければいざ戦場に出た時にすぐに殺されることになるかもしれない。この訓練はその時のためのものだと考えよう」


「そう、、だね。そうだよね。きっとこの厳しい訓練にも意味があるのかもしれない。」


カケルの言葉へそう返したヒロト。しかし2人の決意を決めた言葉とは反対に、3日後その厳しい訓練を続けさせていた教官達が一斉に教官役から解任されたと知らせが届いた。

疑問と共に勇者候補として残ったもの達に湧いてきたのは「もう、あんな厳しい訓練とか生活が無くなるかもしれない」という希望だった。


そしてその希望は叶うこととなった。


これまでの訓練とは全く違う訓練が始まった。

朝早く起こされるところは変わらなかったが、しかしいつも貰うことが出来なかった朝ごはんを貰うことができ、そのご飯は質素ではあるが焼いたばかりのパンの上に卵の乗ったもの、そしてそしてホットミルク。そして朝ごはんを食べ終わり、訓練場へ出ると暴力や暴言を一方的に浴びせられる訓練では無く、新しく教官役へと着いた衛兵達からの優しく丁寧な指導を受けることができた。昼ごはんも今までと違い柔らかなパンと一緒に肉やスープが一緒に出てきたりした。

そんな今までとの訓練の変わりようと、教官達の解任に疑問を持ったカケルとヒロトは新しい教官達へ「なぜ突然こんなにも変わったのか」と聞いた。そして教官達が出した答えに驚くこととなる。


「1週間前、聖女様がお決まりになられたんだよ。その聖女様は平民の出で、王都へ出て1番初めに言われたのが『勇者候補の皆様の所へ行きたい。』と言われたんだ。

そして、直接訓練を見物なさった聖女様はお怒りになられてすぐさま訓練方法の改善を要求された。その結果だよ。」


カケルとヒロトはその言葉を聞き、顔を見合わせて驚いた。聖女が新しく選ばれたことにも驚いたが聖女が一番最初に勇者候補のところに赴き、訓練の改善をしたことに驚いた。

ヒロトとカケルは教官に「聖女様に直接お礼を言わせて貰いたいのですがいいですか?」と聞くと教官は「話を通しておく」と一言いって立ち去った。

そしてその願いも次の日には叶う事となり、直接会うことを許された。


「どんな人なんだろう、やっぱり立派で綺麗な人なのかな」


「さぁな。せっかく直接会えるんだ、会ってからのお楽しみだな。」


そんなことをヒロトとカケルは話しながら聖女のまつ部屋へ通して貰った。そしてそこでヒロトとカケルはまたもや驚くとことなった。


「2人とも久しぶり!」


そこには村で2人が仲良かったハルが座っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る