第191話 出会いと再開

 え、やば。かわよ。髪の毛さらっさらじゃん歩くだけでふわふわってやばすぎだろ。


 まつ毛長っ。そのまつげのカールは天然モノですよね俺知ってるんですよもっとよく見たいから遠見の魔術をーーあ、駄目ですか。はい。そりゃ王族の前ですからね。


 俺の魔術の波動を感じたアルマイルが、俺だけが気付くように殺気を寄越してきた。それで冷静になり、慌てて騎士の礼を取った、のだがーー


「あの、クレスたんとは?」


 目の前までやってきたクレセンシアは、その世界最カワランキング1位のご尊顔で、ありがたくも不思議そうな表情をしていた。宇宙イチかわいい。好き。


「あ、あの、ノルウィン君?」


「はぁっ、、ぐっ」


 これまで受けたどんな攻撃よりも、推しからの名前呼びが心に来る。うめき声を最小限に抑えたから、周囲のほとんどには気付かれなかったようだ。


 ただ、見ればシュナイゼルは呆れ顔をしているし、アルマイルに至っては顔を背けて肩を震わせている。


 そしてクレセンシアは不思議そうな顔に若干の怯えを浮かべていた。かわいい。


 本当にかわいいなあ。可愛くてどうにかなってしまいそうだ。


「……」


 俺はこの可愛い子を守るために、今日まで頑張ってきたんだよな。


 推しの可愛さを通して、この世でなすべきことを思い出す。そうすればもう見惚れて取り乱すことはなかった。


 今この場ですら戦場。俺の全てがクレセンシアの今後に繋がるのだから。


「申し訳ございません。王女殿下の美しさに少々取り乱しておりました」


「あ……、いえ。問題ありませんよ」


 こちらが正しく振る舞えば、王族としてその対応に慣れているであろうクレセンシアもまた、すぐに平静を取り戻した。


 先程までの困惑は既にない。今の俺達はこの場に集まった多くの上級貴族や騎士を前にしても、おかしくない主従関係である。


「私のようなものにご配慮を頂き恐縮です」


 片膝を付いた騎士の礼を取り、クレセンシアはそれを主として見下ろしている。こうして見ると少女は生まれながらの王族であるとわかる。


 凛とした表情、威厳ある佇まい、その身から溢れ出るオーラ。どれをとっても並のそれではなく、見ただけで圧倒的な生まれだと感じさせるのだ。


「いえ。では行きましょうか。奥の部屋に歓迎の用意をしています」


「は、ありがたき幸せ」


 クレセンシアの許可を得て立ち上がり、彼女の斜め後ろを付き従うように歩く。付いてくるのはアルマイルとシュナイゼル、それからクレセンシアのお目付け役であろう数人の男女のみ。


 その他は王族の護衛に関して関わることを許されず、それぞれの持ち場に待機しているようであった。


 今の俺は、この場の多くの貴族をその他大勢にできるくらいには、特別な地位を貰えていると言う訳だ。


 ーーそしてクレセンシアと共に奥の部屋に入って、


「あ、久しぶり」


「え?」


 先に入室していたであろう優男風イケメンが笑顔でこちらに手を振ってきた。


 一瞬で俺の警戒心が跳ね上がる。それほどまでに彼が持つ雰囲気は力強く、ともすれば俺も負けてしまいかねないほどのーー


「お前、レイモンドか」


「そうだよ」


 以前、武術大会で下した相手が、さらなる成長を遂げてそこにいた。

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努力と知識と根性で始める最弱無双のシナリオブレイク 太田栗栖(おおたくりす) @araetaiyou

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