最終話 再会
ジャイアントツリーを出航して数日後
夜の船の甲板で寝そべり星空を見上げていた。
ダグラスから明日の昼前には、ヘインズの町に到着すると知らされていた。
ここ数日ろくに眠れていない。
原因は分かっている。
やっと、やっと茜君と会える。
長かった、茜君と別れてから、生前は50年、今の世でも30年の月日が流れた。
問題は、どんな顔して会えばいいのかが分からない。
刀を渡したことで、自分がこの世界に来ている事は知っているはずだが、80年も会わないでいるとどうしても不安になる。
「なんだ、眠れないのか?」
頭の上から女性の声がした。
声のした方を見るとそこにエルメダが居た。
「そうですね~、どんな顔して会えばいいのか分からないのと、最初になんて言えばいいのかなとね」
「長い事あってなかったからか?」
「えぇ」
「なるようにしかならんだろう、そんなに気負わなくていいんじゃないのか?」
まぁ、たしかに茜君は細かいことを気にするタイプではないが。
「まぁそうなんですけどね~」
ブラン村を出た理由は彼女の前で胸を張れるようにと思って旅に出た。
目標通りS級冒険者になった。
エルメダに鍛えてもらい守れるような強さは身につけた。
十分だろうか?
「はぁ~」
「どうだ?暇ならちょっと付き合え」
エルメダは自分の足元に立ち手を出しだしてきた。
起きろって事かな?
体を起こし手を出すと、引っ張り上げられ立ち上がった。
「うじうじ悩むな、悩むなら体を動かせ、悩みなんぞ吹っ飛ぶぞ」
エルメダらしいなと思った。
「胸を借ります」
「あぁ、こい」
甲板の上でエルメダの胸を借り戦闘訓練をした。
続けていると、夜が明け始め水夫たちが活動始めたので、訓練終了。
「ありがとうございました」
「あぁ、少しは悩みは飛んだか?」
「えぇ」
エルメダがヘイムに行く理由を聞いてみようと思った。
「そういえば、何故ヘイムに行くんです?」
「なに、私らは後継者がしっかりした力を身につけられるようにとな」
私らと言ったか?
ちび助だけじゃなくグアーラも対象ってことか?
「もしかしてグアーラさんも?」
「あぁ、リースは次いでだが受けたいって言うんでな」
「何年くらいやるんです?」
「おまえさんと同じくらいじゃないのか?グアーラは私が納得できるレベルになれば終わりだな」
あ~あ……、グアーラは解放されるときが来るのか?なんて思った。
「そうですか……」
「なんだ、グアーラの心配か?」
「まぁ何となく……」
「大丈夫だ、そんなんで折れてたら好きな奴と結婚出来んからな」
結婚がかかってるのか……。
余計に同情した。
その後、カスミとヒナは船上で遊びまわり、自分はというと、甲板の後方で横に座ってのんびりしているノンの横で釣りをして過ごした。
ちょいちょい釣り上げていると。
「お、旦那結構いいもん釣れてるじゃないか」
後ろを振り返ると、ダグラスが居た。
「ん、あ、どうも」
「もうすぐ到着するぞ」
「そうなんです?」
「あぁ、ほれ見て見ろ」
垂らしていた糸を引き上げ前方が見える所まで来ると、近代的な町が広がっていた。
「なんか、異様な風景ですね……」
「だよなぁ、俺も初めて見た時そう思ったよ。だがな、あの町は凄いぞ、精霊達が多く住んでいるらしくてな、夜は結構きれいだぞ」
姿を見せてるのかな?
「精霊の姿が見えるんです?」
「あぁ、日中はあまり見ないが、夜は青と黄色の光の玉をちょいちょい見るな」
それだけ多くの精霊が住んでいるのかな?
『人口の9割が精霊っていうね~』
『ほぼ精霊じゃん!』
『なんていうか、闇の子達が死体に入って人として生活してるんだよね~』
『そうなの?』
『そうだね、僕たちも一緒に生活しようかな?』
レムも一緒に住むのか?
『精霊達は何かやってるの?』
『そりゃもう色々やってる!水の子と地の子が畑作業したり林業したりしてるんだよ』
『へぇ、精霊達も働いてるのか』
『そうそう~』
なんか面白そうな事やってるなと思っていた。
そんなこんなんやり取りをしていると大きな桟橋に船が停泊した。
甲板にみんなで集まったのを確認し、下船した。
船を降りるとこの町の住民だろうか、紺色のスーツの様な物をきた1人の女性が近寄ってきた。
「ようこそヘイムの町へ、今日はどういった御用でしょうか?」
「あぁ、ワシはガッザラってもんなんだが、この町の長に会いに来た。出来たら案内してくれると嬉しいんだが」
「ガッザラ様ですね、話は聞いております。係の者が案内しますのでしばらくお待ちください」
女性はそう言うと、近くに居た10歳位の女の子を手招きで呼び、こちらに戻ってきた。
「こちらの子が案内します」
「あぁわかった」
『闇の子だ』
『だね~』
『さっきの女性は?』
『普通のエルフの人だね~』
『そうなんだ』
女の子はこちらを気にせずに、丁寧に案内してくれた。
「お主は喋れんのか?」
ガッザラがそう聞くと、女の子はこちらを振り向きコクコクと頷いた。
「そうか、変な事を聞いてすまんな」
そう言うと、ふるふると首を振り、また前を歩き始めた。
『病気なのかな?』
『ちがうよ、そもそも私達って喋る必要ないからね』
『だね、同じ属性同士だと思えばやり取りできるからね』
『そうそう、私とレムは喋ってるように見えるかもだけど、他の人には聞こえないからね~』
そう言うもんなのか、女の子を見ると何かあればジェスチャーをして伝えている。
段差があれば、その段差を指さして注意を促したりしていた。
女の子について行くと、この町で一番高そうなビルの中に入り6階のとある部屋の前で立ち止まった。
ん?と思っていると、扉が開き机向こうには、あの時デートをするはずだった彼女がいた。
「やぁ、茜君久しぶりだね」
とポロっともれると、
「せんせ……」
懐かしい声だ、と思っていると茜君がこっちに駆けよってきて抱き着いてきた。
あ~懐かしい感触だ。
色々な懐かしさがこみ上げ、思いっきり彼女を抱き返し。
もう二度と離さないと誓った。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~ 川原源明 @murasameyuu
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