第2話

くそ、くそ、くそっ!!

なんで?なんでこんなことに?

くっそ!!


マルスは走った

いつも歩く道、いつも見てきた景色

マルスは自分に起きた事が信じられなかった


くそ

なんなんだ!!

途中まではうまくいっていたんだ

なのになんで・・・


マルスは辺境の小さな村で生まれた

村には元騎士団に所属していたという老人が起こした剣術道場があり、マルスもそこに通っていた。成長するにつれ村でマルスに勝てる人間はいなくなり自分の力に絶対の自信を持っていたマルスは村を出て冒険者になった。

冒険者になった時、たまたま一緒の日に冒険者登録をしたゼクスと知り合い一緒にパーティーを組んだ。そこから活動していくにつれリーシャとカガリが加入し、とんとん拍子にランクを上げていったマルスはますます自信を付けいつのころからか他者を見下すようになる。無意識下にあったが・・そしてその自信がとうとう厄災となって自身に降りかかったのだ。


全部ゼクスのおかげ?

ふざけるなっ!!

蒼き稲妻を作ったのは俺だし、いままであいつらを引っ張て来たのも俺だ!!

絶対にゼクスのお陰なんかじゃない!!


マルスは頭は走りながら今までの冒険の数々の記憶を走馬灯のように思いだしていた。そして自分でも不思議と力があふれたり、今まで使えなかった力を使えたりと疑問な場面がはっきりと脳内に残る。

そしてその度にゼクスが何かしていたのではという思いが駆け巡り、マルスは全力で否定した。


違う!!違う違う違う違う!!!

アレは俺の力だ!!

俺の実力だ!!

俺は強いんだ、誰も俺にかなうはずがねぇ!!


マルスは走る

すでに体力は限界を超え足元がふらつく

それでも走る

走らないと闇は自分を飲み込む事を恐れて

どれくらい走っただろうか?

いつの間にかあたりに建造物は無い

あるの闇に染まった世界のみ・・・

マルスは唐突に止まった

そして地面に膝附、視界は涙で溢れた。

そして理解した、もう自分にはなにもないと、自分は闇に捕まったのだと

そう自覚すると不思議なことに脳内が急にクリアになる。そして現状を思い出して絶望した。

ここはすでに人間の領域ではない。魔物が闊歩する領域だ。武器や防具、マジックアイテムの類は宿に置いてきているもちろん食料もない、今手元にあるのは酒場を出る際とっさに掴んだ金貨が数十枚のみ。無我夢中で走ったためここがどこかわからい。

走って来た方向に踊れば戻れるだろうか?いや、仮にそうだとしても戻るまで魔物に会わないととい保証はない、ここまで無事に走れたのが奇跡みたいな状況だ。

どうする?マルスが思考を巡らせる。しかし時は彼を待ってはくれない。

なんで自分ばかり?今頃ゼクスをはじめ、先ほど自分を馬鹿にしていた連中は自分の情けない姿を肴に酒を煽り、わいわい騒いでいるのだろう。それとも自分のことなどもはや記憶の片隅にも残らずゼクス争奪戦などをして賑わっているのか

クリアになった思考はマルスに希望を与えず絶望的な光景ばかりを見せる。

マルスの視界はまた滲む

もう、どうでもいい。自分などいなくてもいいではないか

どうせ村に戻っても居場所はない。両輪はすでに亡く、帰る家もない

このまま魔物に食われて消えるのも悪くないだろう。


願わくば一瞬で命を散らしてくれ


それがマルスのたった一つの願いだった。

そして・・・それは現れた


「いや~、災難だったね~}

「は?」


闇夜から現れたのは魔物ではなっかた。黒い服に黒髪の女だったのだ

女のいきなりの登場のに先ほどまで流れていた涙は止まり見上げる形で唖然と

女を見るマルス。そんなマルスに女は活発な笑みを浮かべ


「あれはないよね?みんな敵だったなんてさ。あれじゃとんだピエロじゃん!!」

「くっつ」


女の言葉は事実だった。

マルスが冒険者になって10年、正確には分からないが最低でも5年はみな自分を馬鹿にしていたのではないか?

他の冒険者はわからない、しかし酒場に併設されているギルド、その職員達は俺がゼクスに追放を宣言をした時驚き、リーシャの返しを聞いて当たり前と頷いていたのを目の端が捉えていた。自分に不幸が舞い降りている瞬間ほど周りが見えるとはよく言ったものだとマルスは自嘲気味に笑ってしまいそうになる。


「それでね、私はああいうの大っ嫌いなんだよ」

「おおいうの?」

「うん。ざまぁ系」

「ざまぁ系?」

「そう、貴方のように下に見ていた奴が仕返しされて不幸になるの。ほんとならあのままゼクスは追放、その松美少女と出会ってその子と新しいパーティーを組んで上位ランクにまで上り詰める。対するあなた達は優秀なゼクスが抜けたことで依頼を失敗し続ける。そしてランクを落としていき最後はみんな不幸になっていくの。それがざまぁ系」

「なるほど」


たしかにそれは見ている側からすれば痛快だろう


「でも今回は追放されたのは貴方だけ、それじゃつまらない」

「つまらない?お前はいったい?」

「あ、自己紹介がまだったね」


そういうや女はスカートの両裾を軽く持ち上げ頭を下げる


「私の名前はキリ、貴方を導く者」

「導く?俺を?」

「ええ、今貴方には2つの道を示します。一つ、このまま魔物に食われ生を終わらせる道。二つ、私の手を取り奴らを見返す道。どちらを選ぶかはあなた次第です。さあ、どうしますか?」


キリと名乗った女の言葉にマルスは悩んだ。

よく周りを見れば雨が空中で止まっており、音すら聞こえない。

まるで時間が停止しているかのようだ

このような不思議な事ができる人間などいない

導く者などと聞いたことがないが何らかの超越した力を持っているのは確かだ。

ならば彼女が提示した最初の魔物に食われ生を終わらせる道とは確定した未来

そこまで考えたマルスは自嘲気味に笑った

プライドをずたずたにされ先ほどまで死にたいと願っと叫んでいついた自分、だが実際に死ぬ未来をと知った自分は心の底から死にたくない叫んでいる。

ならば答えは決まっている。

マルスは立ち上がった。その眼にはもはや絶望の色はない。


「キリ、俺を導いてくれ。頼む」


マルスはキリに頭を下げた。

そんなマルスの姿を見たキリは笑みを浮かべる。もちろん頭を下げているマルスには見えない


「いいでしょう。では、行ってきなさい。力を手に入れるために【ディメンションゲート】」

「え?わっつ!?」


急にマルスの足元に門が現れ扉が開き、マルスは落ちていってしまう。

門はマルスを飲み込むと扉を閉め消えてなくなった

残ったのはキリだけ


「これでいいのですね?」


誰への問なのか、キリの声はいつの間にか動き出した激しい雨音に消えていったのであった。



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追放された者は破滅しかないのか? @masaki213856

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