【42】bullet


「では一年生はコート端エンドラインの所で待機していてくれ」


『はい!』


 千田監督の指示を受け、永児たちはVアーマーを操縦しながらコート端に移動した。


 ずしんずしん、と足音を響かせて横一列に一年生が並んだのを確認して、千田はインカムの方に声を送った。


「梅田さん、準備は良いかい?」


『はーい。準備オッケーです』


 返事をしながらカラカラと音を立てるボールの詰まったカゴを引き、ネットを背にして1年生たちの向かい側に立ったのは、04と番号が打たれたVアーマーだった。


 同じくVアーマーに乗っている永児たちからは操縦席が透過して見えるので、乗っているのは菜乃花だと視認できる。


『それじゃあ今から一人ずつ、ボールをレシーブしてもらいます!

高座くんから前に出てー。それ以外の人は応援したりボール拾ったりしてくださーい』


 よく見ると菜乃花が乗るVアーマーの片手には大型の筒に似たものがあった。


 筒にはグリップが付いており、さらに引き金トリガーまである。

 グリップを握りながら、筒の部分を肩に乗せて構えている様はまさに……。


『梅田さんそれは……?』


 永児が恐る恐る聞くそばで、蓮奈がぽつりと呟いた。


RPGアールピージー的なものにしか見えないんですが……?』

『蓮ちゃん、RPGってなに?』

『えーっと、バズーカみたいに肩に担いで撃つ大型の兵器だよ』


 灯に説明する蓮奈を横目で見ながら(RPGって単語知ってる女子も珍しいな……)と永児は思った。


 永児にとってはゲームや映画でよく見かける武器なのだが、同級生女子の口から兵器の名称であるRPGが出てくるのは初めて見た。


 すると菜乃花があははと笑いながら、自身の肩に担いでいるバズーカ砲のような道具について説明した。


『これはボールを射出するの。さすがに弾丸は出ないよー。じゃいっくよー!』


 どよめく1年生たちに向かって、菜乃花が大筒を構えなおす。


『喰らいやがれェ!』


 ドン!!!!とバズーカ砲から射出されたボールはとんでもない速さで、レシーブの構えを取る健流の方へ向かっていった。


『ぐあっ!』


 ゴォン!という音が響き、ボールが宙に跳ね上がる。どうにか機体には当たったが、レシーブしたというよりは体で止めた、という方が近い。


(あんなの当たったら……普通、鼻血じゃ済まねえよな)


 しかもボールが機体に当たったときの音がこれまたえげつない。


 金属音が響く音を聞いた瞬間、永児は生身で当たったらどうなるのか考えただけでも恐ろしくなった。


 鼻血程度で済まないどころか、顔面が潰れてしまうのではないか。


『おーっと、倒れなかったね。そこはさすがミドルって感じ?』


 もうミドルブロッカーとか関係ないだろ……と思う1年生たちをよそに、菜乃花はさらに恐ろしいことを口にした。


『今のは一番出力が弱い設定のボールだから。腕がもげることはまだ無いから安心してね!』

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ARMOR SPIKE:D!!!~鹿島能登高校アーマーバレー部~ 北原全悟 @valhalla333

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