【41】bullet
今日も今日とてVアーマーの練習は歩行訓練から始まる。
源三郎の号令に従って、永児たちは体育館の中を端から端まで歩き、小走りで戻る。歩く練習なんて永児にとっては赤ん坊以来だ。
「一歩ずつな。顎は引いておけよ。前に転んだ時に顎から激突するかもしれないからな!」
源三郎からもらったディスクROMに映っていたアーマーバレーの選手たちは、当然のようにコートの端から端まで動き回っていた。
だけどパワードアーマーに乗り始めた今の永児たちは、文字通り赤子同然だった。
Vアーマーにはパワー
確かにパワーアシストが付くことは大きなメリットと言える。
だが乗ってみてわかったことだが、この補助機能によってVアーマーの動きには独特のクセが存在するのだ。
Vアーマーに乗って身体を動かすと、まるで後ろからぐんっと力強く押されるような、あるいは引っ張られるような感覚が生じる。
これがパワーアシストによる独特の感覚であり、要は乗り手の動きに合わせてアーマー側から力を加えたことによる反動だ。
これに慣れていないと、Vアーマーの加力によって歩く際にも転倒してしまいかねない。
だからまずは一から体の動きをマスターしなければならないわけだ。
最初は一歩だけでも恐る恐る脚を出すような有り様だったし、壁に手をついていないと心許ないほどだった。
初めてVアーマーの講義を受けてから一週間ほど経った現在では、フライングや軽くランニングする程度の動きはできるようになっている(とはいえ、気を付けていないと転びそうで怖いが)。
他にも物を掴む練習からボールを使った軽いパス練習まで、永児たちは基本的な動きを一つずつ学んでいった。
ちなみにアーマーバレーで使用するボールは、通常のボールよりも少し大きい。
Vアーマーの全高が2mを超えている上に、パワー補正で受ける衝撃が大きいので、やはりボールも専用のものになるようだ。
とはいえ軽いパス練習くらいなら、普通のボールを使っても問題ないとのことだ。
「1年生、集合!」
『はい!』『ウス!』
源三郎の号令でVアーマーに乗った1年生たちが監督の前に整列する。
「皆だいぶ動けるようになったから、今日から本格的にVアーマーでの練習も始めていこう」
『はい!』
「知ってのとおりVアーマーのボールは通常よりも速いから、これをレシーブできないと話にならない。
まずはボールをレシーブできるようになることに重点を置くこと。これを頭に刻んでおくように……とにもかくにもまずはレシーブだ」
いよいよ本格にアーマーバレーの練習が始まる……操縦席の中にいる永児の心は色めき立った。
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