ネタ切れという名の命乞い 1回目

牛尾 仁成

ネタ切れと言う名の命乞い 1回目

 創作者という生き物にとって辛いものは二つ。

 

 一つは締め切り、もう一つはネタ切れ、だ。


 突然何を言ってるんだコイツ、と思われた方にちょっとしたご説明をしたい。


 2022年7月現在私は、自らが創作に向き合う動機付けとして1日1本、作品を作って投稿することを課しているのである。以上。だから、これより私が展開する話は、ただネタが出ない残念な生き物の言い訳と命乞いでしかないので興味が無い方は時間の無駄なのでそっ閉じすることをオススメします。


 それでは、どこにも需要がないと思いますが命乞いを始めますね。


 締め切りというのは実際のところどうにかできる。それは人と人とのお約束に過ぎないのだから、無くしてしまったり動かしたりすることは物理的には可能だ。単純に動かしたときの信用問題や掲載のスケジュールのズレ等のデメリットが生まれるだけである。


 対して、ネタ切れの方は厄介極まりない。ネタが尽きぬネタの泉みたいな脳みそを持っていればいいのだが、そんな都合のいい脳みそは私の頭に入っていない。ネタ切れは約束とは違うので、ネタを思いついて切り抜ける以外に対処方法がない。そう、文字通り思いつかないとどうにもできないわけだ。誰かに土下座してズラしてもらったり、靴を舐めて許してもらったりはできない。土下座しても靴を舐めてもネタの神様は知らんぷりで、一向に私にネタを授けてはくれないのだ。さっきから、ないないばかり書いているが、無いモンないんだから仕方が無かろう。無い袖は振れないんじゃ。


 素朴な疑問なんだけど、創作者の皆さんはどうやってネタを思いついているのだろう? 頭の中にネタの畑があって、時期に合わせておいしいネタを収穫しているとでも言うのか? だとしたらなんて羨ましい、と隣の芝生が青く見える粗忽者の私であるが、粗忽者なりに考えたりもする。


 畑というものは管理が大変だ。ゴミを拾い、土を耕し、栄養を与え、種を撒き、水をやり、雑草や小さい苗を間引き、虫、病気、天災に注意しつつようやく収穫できる。ネタ作りも同じなんじゃなかろうか?


 例えば自分の体を土としよう。ゴミを拾ったり、土を耕すというのは要は体を動かすという事だ。運動もいいかもしれないが、ネタに繋がるような動かし方が望ましい。どこからネタなんて生まれるか分からないんだから、取り敢えず何かしてみるといいかもしれない。部屋の中でじっとしているだけでネタを思いつくなら、誰も苦労はしないだろう。栄養や種というのは新しい刺激と例えてみたい。どういう方法でその刺激を得るのかは人それぞれだろうが、新しいことに挑戦してみるのもそうだろうし、知らない知識を深めるための読書も立派な刺激だ。とにもかくにも、そういうことを体験してみることによって、新しい発想、つまりネタのタネが自分の中で育つんじゃなかろうか?


 もう賢明な皆さんならお分かりだと思うが、水を撒いたり、雑草や小さい苗を間引くのはそのネタを創作として昇華する過程のことだ。ネタ切れと付随してキツいのは思いついたほんのちょっとのネタを、きちんと作品として構成しなくちゃならない点である。創作と妄想の最大の違いはここにあると、偉そうに私は語ってみる。最後の虫のくだりは、要は誤字とか脱字、発表の方法を間違えるとかそういう話なので、これ以上は言わないことにする。私なんぞよりももっと深い考えの方が良い文章で述べてくれているだろうから、そっちをご覧になってください。


 さて、そういうわけでネタ切れを起こした物書きが追い詰められて、血迷って書きなぐってしまった文章だが、一つだけ言い訳をさせてほしい。こんな文章で取り敢えず私は自主企画(サイトではなく、自分が自分に課しているだけのヤツ)のノルマを達成したと言い張りたいのだが、いくら私が路傍の石にも劣る創作者といえども一応誇りみたいなものがある。観測できないぐらい小さいと断言できるちっぽけな誇りが、こんな手段を二度と使うなよ、と小っちゃい声で囁いてくるのだ。


 私の様な意志も弱けりゃ頭も弱く、まして文章能力など一ミクロンも無い人間がこういう狡すっからい手を使うと、すぐにネタ出しと創作をサボってしまう。ネタ切れだからと言って命乞いと言い訳に走るエッセイもどきを作ることはしない、と言っておきたかったのだ。


 え? じゃあ、タイトルの1回目って何だって? アレー、オカシイデスネ。ワタシノメニハナニモミエナイデスヨ? 冗談はこのぐらいにして、2回目が出ないようにしたいとは本気で思っている。ほんと、ほんと、ゾウリムシ嘘つかない。ただ、人生何が起きるかわからないのも事実だから、何かやむを得ない事情(朝起きたら「ぬ」しか書けなくなっていたとか、人間が万物の霊長の座を追われてマシュマロに支配されているとか)が起きるかもしれないから、万が一を考えて「1回目」と書いたのだ。


 ……いや、マジで2回目は使いたくないです、本当に。


 そういうことで、誰も読まないだろうこの文章にお詫びを乗せてこの駄文を締めくくりたいと思います。


 どうか、命だけはお助けください。


 ※ここまで書いて気づいたけど、締め切りはどうにかできるって書いておきながら、私は締め切りを守るためにネタ切れをネタにして乗り切ったということになりますよね? するってーと、やっぱ締め切りも人の意志で動かせるものではないんじゃ……うっ、頭がっ!

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ネタ切れという名の命乞い 1回目 牛尾 仁成 @hitonariushio

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