第15話

「例えばですか……」

シルは少し考える素振りを見せてから

「私が聞いたのは、クマの魔物が大量発生して蜂蜜が取れなくなった事があったらしいのですが、バース様は3日間の休みを取ってブルペン王国中のクマの魔物を絶滅させたとか……」


「絶滅っ!!?!」

思っていた斜め上の話が出てきて唖然としてしまった。


「談吾様大丈夫ですか?

まだこれは簡単なレベルですよ?」


「オレが思っていた以上にバースさんはヤバっ……いや凄い人だったんだな……」


「まだお話を続けますか?」


「あぁ頼むよ」

さっきので優しいとなると他の話も……


「他のお話ですと

砂糖を名産として財をなしているフエットチネ領があるのですがそこの前領主が私腹を肥やす為に砂糖の価格を法外な値に上げて菓子店が砂糖を入手出来ないと言う状況があったらしいのです。しかも盗賊団を雇ったり、兵にも指示を出して値段操作をバレない様にしていたそうです。それでも表向きは王国内での砂糖の原料が不作なのだと思って納得していたみたいですが隣国のダカメ帝国に砂糖か横流しされていると言う噂が出たのです。」


「あぁなんとなくその話の先が想像出来てしまうね」

どこの世界にも私利私欲で行動する奴はいるしそう言う奴は大体何処かでバレて居なくなるものだ。


「まぁ談吾様が想像出来るようでしたら結末を簡単に言うとバース様の働きでフエットチネ領の領主は砂糖の横流しかバレてお家を潰され違う方が領主に付き、ダカメ帝国からもとても異例な事ですが謝罪とバース様個人へ返礼としてダカメ帝国の爵位を貰ったそうです。」


「……ん?前半の領主の話はわかるけど後半のダカメ帝国の爵位はなんで?」

悪徳領主が潰される部分は理解できるしバースさんならそれ位簡単にやってのけそうだけど 、

なんで隣国の爵位貰えるのよ?

この世界は国同士の交流がほとんどないって話だったじゃん!


「私も詳しくは分かりません。ただバース様はダカメ帝国以外の国でもVIP待遇だそうですよ。」


「はぁ~バース様が規格外って事で納得して置くよ。」


なんか話を聞いているだけなのに少し疲れた。

そう思っているとドアがノックされた。


「どうぞ!」


「夜に失礼しますね。」

部屋に入って来たのはニコニコしたバースさんだった。



「談吾さん進捗はどうですか?」

バースさんがちょっと怖い笑顔で聞いてくるがそれだけ楽しみだと言う事かな。


「あと少しですよ。」


「おぉーそれは良いですね!迅速な対応でとても嬉しいです。アル坊も普段からこれくらい仕事が早ければ私も時間が出来て甘味巡りが出来るのですがねぇ」


アルフォート様との関係と甘味好きと言うのがオレに知られてからは喋り方がかなり砕けた感じなっている


「談吾さん、ちなみにもしアンコが作れた場合はどう言った甘味にするのがおすすめですか?私としてはやはり出来るだけ本場に近い形で頂きたいのです。基本的に既に存在する菓子と言うのはその形が1番素材を活かす為に辿り着いた形なので私としてはその完成系の菓子を食べたいのです。もちろん私なりのアレンジをする時もありますがそれは基本の形を味わい尽くしてからの楽しみ方だと思うのです。ですから談吾さんにはアンコを使った菓子を出来る限り全て教えて欲しいのです。ですから……」


「若様失礼します!」


とてつもない勢いで熱弁するバースさんに少し困っているとルマンドさんがノックもせずにドアを開けて入ってきた。


「バース殿お話中すまないが少し若様と明日からの予定の話がしたいのだがよろしいか?」


「ルマンドさんノックもせずに入ってくるのは少しマナーがなっていませんよ。大事な若様相手なら尚更気を付けるべきでは?」

話を中断されたバースさんはルマンドさんに少し嫌味な感じで言葉を返す。


「確かにそうですね。バース殿には毎度勉強させられますな。」

それに対してルマンドさんは素直な反応をする。ルマンドさんには嫌味が通じないのでバースさんは肩透かしをくらい冷静になる。


「ふぅー確かに談吾さんは明日から本格的な戦闘訓練をやる訳ですし甘味談義はまたにしますか。談吾さん明日の朝までで良いので報告書はゆっくりで大丈夫です。」

バースさんはそう言うと部屋から出て行った。


「若様大丈夫ですか?バース殿は甘味の話なると止まりませんから困っているのではとノックもせずに部屋に入りました。申し訳ありません。」ルマンドさんはそう言うと頭を下げた。


「いやいや謝られる程の事ではないので頭を上げてください!それに少し困っていたのは事実ですからむしろこっちがお礼を言う立場ですよ。ありがとうございました。」

そう言ってオレが頭を下がる


「若様が頭を下げる程の事ではないですぞ!」

ルマンドさんが慌てる。


「フフフッ!」

オレ達のやり取りを観ていたシルが笑った。

「お互いが頭を下げ合える様な優しい主従関係は見た事がないですよ。」


シルの言葉を聞いたルマンドさんが

「やはり若様はアルフォート様のご子息として申し分ないですな。このルマンドもしアルフォート様以外に仕えるなら若様に仕えたいですな。」


「その言葉は嬉しいけどオレはアルフォート様の子ではないからねぇ。それにオレなんかにルマンドさん程の方が仕えるのは勿体ないよ。」


ルマンドさんの気持ちは素直に凄く嬉しいけど

ここまで良くして貰った上に更に養子になるなんてオレには考えられなかった。

アルフォート様達への恩返しは違う形でお返ししたい。


それにオレはまだ家族と言う関係に不安な気持ちがある。

オレは気持ちを切り替える為に話を変える。

「明日からの予定の話で来たのでしょ?そちらの話をしましょう。」


「そうでした!つい話がズレましたな」


こうして今日はルマンドさんと予定を決めて報告書を作り1日が終わった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者にも魔王にも興味はない!オレはラクに楽しく生きたいだけだ! 自宅警備員カワウソ @sinku7110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ