第14話
「アンコ?それは一体なんだ?」
流石のアルフォート様でも分からない様だ。
「小豆という豆を甘く煮て潰して作る甘味です。」
オレの大好物が何を隠そう餡子を使った和菓子なのだ。
「甘味!」急にバースさんが大きな声を出した。
びっくりしたオレと飽きれた様子のアルフォート様がバースさんを見ると
「すみません」バツの悪い表情を浮かべた。
「バースは無類の甘党なのだ。ワシは昔バースの菓子をつまみ食いをして死ぬ思いをした事がある。」
「アルフォート様その話はやめてください!」
いつも知的で優しい印象のバースさんにも意外な一面があるんだなぁ
「話を続けても大丈夫でしょうか?」
「あぁ続けてくれ」アルフォート様が答える。
「先程も言いましたが日本で1番メジャーな餡子は小豆を使っていましたがそれ以外にも様々な豆を使った餡子があります。
なのでこの国でも餡子に出来る豆があるのでは?とオレは考えています。」
アルフォート様はなるほどと頷いているがバースさんは何やら考え込んでいる。
「ちなみにブルベン王国では甘味品は高級品だったりしますか?」
「安くはないが庶民でも普通に買える価格だ。種類としてもクッキーなどの焼き菓子や簡単なケーキだな。」
「なるほど、それでは上手く作る事が出来れば流行るかもしれませんね!
あっ!でも王都に行くまでにレベルを10にしなくて行けませんし。まだ先の話になりそうですね。」
1ヶ月後に王都で王様と謁見するとなるとそこまでの移動なんかを考えるとあと半月位でなんとかレベルを10にしなければいけないし、モンスターとの実戦もしないといけない訳で時間があまりないな。
「わしも餡子の件は後回しにした方が良いと思う。アルフォート領から王都までは馬車で約4日かかる、謁見前の準備を考えると出発は4週間後になる。その為、談吾に4週間でレベルを10まで上げてモンスターとの戦闘も経験しないとならない」
「そうですね。それではルマンドさんと相談して期日に間に合うように頑張ります。」
「待ってください!談吾さん!」
オレがアルフォート様との話を終えたタイミングでバースさんがオレに待ったをかける。
「もしかしてバースさんも協力してくれるのですか?ありがとうございます、流石に期日を考え」
「いえ違います!」バースさんがオレの話を遮る。
「談吾さんその餡子という物の事を少し詳しく教えてください。その上で材料の調達と調理は私がやります!」
「バースなにを言っておるしばらくルマンドが談吾と動けなくなる状況でお前まで動けなくなると流石にワシの仕事が増えるではないか!」
アルフォート様が慌てた様子でバース様を止めようとする。
確かにいくら平和で仕事が少ないとは言え、約1ヶ月もの間アルフォート様1人で仕事をやるのは大変。
しかしバース様をアルフォート様を無視して話を続ける。
「談吾さんは今晩中に餡子に関する事を全て紙に書いてください。それを明日の朝、私に提出してください。それを元に私が餡子の調理を進めるので定期的にアドバイスをお願いします。」
「バースよ談吾には訓練がある、それにお主にも仕事があるでわないかいくら甘味に目がないとは言え今回の事は王命であるからお主のわがままは聞けぬぞ!」
アルフォート様は王命という言葉まで使いなんとかバースさんを止めようとするがしかし
バースさんはアルフォート様の方を見て笑顔で言葉を返す。
「アル坊まだ懲りていないのですか?昔伝えましたよね?私の甘味へ欲求を制限をするなら命をかけろとそれに仕事や訓練に関しては大変だと思うから大変なのだ、本人の意思次第でいくらでも大丈夫になるのだと。
それに王命と言いましたが今の王もまた私の教え子であり、たくさんの借しもありますから何か言って来たら最悪、無理矢理黙らせます!」
位置的にオレからはバースさんの顔が見えないがアルフォート様がガクブルしているので相当怖いのだろう。
オレもバースさんに甘味関連では一切邪魔をしない事をこの時誓った。
結局アルフォート様は納得させられた。
オレはルマンドさんとレベル10になるまで訓練をしてそれに並行してバースさんへの餡子調理のアドバイスをする事になった。
モンスターとの戦闘は万が一を考えルマンドさんとバースさんの2人と行う事になった。
ーアルフォート領 城内 談吾の部屋ー
コンコンとドアをノックする音が聞こえる。
「空いてますよ。」
「失礼します。紅茶をお持ちいたしました。」
シルがお茶が乗ったカートを押しながら入ってきた。
「ありがとう」オレは書類を書きながらシルに答える。
「今、書いているのが新しい甘味に関する報告書ですか?」
餡子の話はついさっきの事なのにシルが知っているとはちょっと驚きだ。
「そうだけどよくわかったね?」
素直に疑問をシルに聞く。
「えぇ先程バース様が随分と楽しそうに話をてくれました。その時に談吾様の書類作成がはかどる様にお茶をとも言われましたのでこうして来た次第です。お邪魔でしたでしょうか?」
オレが思っていたよりもずっとバースさんは楽しみにしているようだ。
「いいや、丁度切りもいいし一休みするよ。それにしてもバースさんがあそこまで甘い物に目がないとは思ってもみなかったよ」
シルはお茶を入れながら
「そうですね。私もあんなにウキウキされたバース様は初めて見ました。メイド長が言うにはバース様の甘味関係の逸話は結構あるそうで
すよ。」
「へぇー例えばどんな物があるの?」
純粋に興味があり聞いてみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます