第13話

「それでバースよもうよいか?」

アルフォート様は待ちきれない様子でそう聞く。


「先程も言いましたが程々にしてくださいね。私も居ますのであまり酷いと止めますからね?」


「わかっておる!さて談吾よ日本の話をして欲しいのだがよいか?」


「ええ、いいですよ。でもオレのわかる範囲でになりますが。」


アルフォート様は自分の興味のある事にはとても意欲が高い、オセロの時もそうだが普段の辺境伯としての威厳が形無しだ。


「えっとそれではなにが聞きたいのでしょうか?サムライとかニンジャとかの定番ですか?」オレはこういう場合の定番を出してみた。


「それも気になるが大昔の話なのであろう?それよりも武士道が気になるこの世界にある騎士道がそれとは違うと聞く、後はワビサビと言うものが知りたい!物などの事であれば何となくでも想像出来る物もあるが思想的な事になると言葉で説明をしてもらった方がわかりやすい。後は和食だな!それと…」


「アルフォート様!いきなり沢山聞いても談吾さんも困りますよ!先程も言いましたがあまり酷いと止めますよ?」

アルフォート様の矢継ぎ早な言葉にバースさんが待ったをかける。


「バースさん、オレなら大丈夫ですよ。

ひとまず武士道とかワビサビの説明でいいですか?オレも詳しい事はわかりませんが本なんかで得た知識としてなら何となくの説明もできます。」


「あぁまずはそれで頼む。あまり言うとバースが怖いからな」

アルフォート様は少し焦った様子で答えた。


「それでは、まずは武士道は簡単に言うと騎士道に近い物ですが考え方が少し違います。」


「騎士道は皆の模範となるやるように鍛錬や立ち振る舞いをし正義を重んじる感じでそこに命をかける事は確かダメですよね?

武士道も騎士道と大筋は変わりません。

しかし正義よりも己の誇りや名誉などを1番大切にしそれが穢されるのなら死ぬのが正しいと言う考え方で1度決めた意思は死んでも変えないと言う考えが武士道です。」


「オレは騎士道も武士道もよくわわかって居ない人間ですのでこの位しか説明はできませんね、すみません。」


「ふむ...命を賭ける事でより覚悟を深くすると言う訳か、それに名誉や誇りと言ったがその形は様々だろうもしそれが自分ではなく主や国に対してであれば命をとしての忠義と言う事になる。やはり興味深いなぁ」


アルフォート様はオレの話から自分なりの解釈で納得し頷いている。


「まぁオレは武士ではないのでその辺の詳しい心はイマイチ理解はしていないのでこれくらいしかわかりません。」


「よい!少なくても日本の文献に書かれてる知識であれば大きく外れている事もなかろう。」


「後、オレはワビサビについてはわかりません。オレはその辺に対する感じ方が普通の人よりも薄いので自然や時間の移り変わりに感動を感じた事がないので」


「そうか...であれば談吾はワシとワビサビを覚えてゆけばよい!もうワシやバースはもうお主の家族同然だそう言う事に目を向ける余裕や時間は沢山あるからな」


オレは予想外の返答に目が点になってしまった。確かにオレの今までの人生にそうした余裕などなかったし心を許せる相手もいなかった。


改めてこの人達の暖かさを感じて心が暖かくなった。


「他に何か聞きたい事はありますか?」


「であれば和食についてだな。オレオの所の賢者殿も食に対する発信はしておるがあくまで私に合いそうな物を選んでくれている節かあってな、確かに今までにない料理が多いがジャンルとしては洋食と言うやつだと思っておる。」


なるほどねぇ賢者さんはこの国の人に受け入れやすい物を選んで教えているのかぁ。

確かに和食は今では割と地球の国々では知られているが刺身や納豆なんかはまだまだ受け入れられない国や人も多いと聞くからな。


「アルフォート様は和食について何か知ってる事はありますか?」

オレはまずアルフォート様が和食について何処まで知っているか確認するため質問を返した。


「ワシが知っておるのは醤油と味噌と言う日本独自の調味料と米と言う穀物の事だな。

この3つが和食の基礎だと先祖が残した書物に書かれていた。」


「なるほど、ちなみにアルフォート様のご先祖様はその3つを作らなかったのですか?」


「ワシの先祖も作ろうと試みたが味噌と醤油の作り方が分からず原料になる豆までは見つけたが断念したそうだ、米も近い穀物は見つけたが日本で食べられている物とは違うらしい。」


「味噌と醤油の作り方はなんとなくですがわかるので原料の豆があればなんとかなるかもしれません。ですが米はその近い穀物を見ないと分かりませんが今の所はちょっと難しいかもしれませんね」


「味噌と醤油を作れるのか!?」

またアルフォート様の食い付きが凄い


「えぇオレが前世で勤めていた所が食品関係の仕事もやっていたので知識はありますから頑張れば作れると思います。それにこの世界には魔法がありますからそれを上手く使えばなんとかなるのではと思っています。」


オレが前世で勤めていたブラック企業は日本の物を輸出する貿易関係の仕事で日本食の輸出もしていた。その中で自社で作れば儲かるんじゃないかと言う無茶振りで味噌や醤油の作り方を調べた事があったのだ。

ちなみにこの無茶振りは流石に失敗、発案者のお偉いさんてはなく失敗したオレら平社員が怒られて仕事が増えた苦い思い出がある。


「後はオレのおすすめの和食であれば餡子ですかね」急なドヤ顔で自分の大好物を提案してみた。




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