いるはずがない、とわかってはいても

 おばけなんていない、そんなの嘘だと、理屈ではわかっていても怖いのがお化けというもの。

 怖い夢を見て眠れなくなった子供と、それをあやす父親のお話です。
 本当にただそれだけ、とても穏やかで優しい日常のひとコマ……のはずなのですけれど。
 もしかして、ひょっとして、という気持ちを拭い去れない、その疑心にあるいは「おばけ」がいるかもしれないお話。

 ただの夢だとわかっていても、やっぱり怖いものは怖いというか、一度「なんだか怖い」と感じてしまうと、どんどん思考がそっちへ転がってゆく、あの感覚。
 共感できるというか、この〝身に覚えのある感じ〟が素敵なお話です。

 果たして、おばけはいるのかいないのか?
 本当にただの夢だったのか?
 ついぐるぐると疑り続けてしまう、不穏な余韻が独特な物語でした。