第4話

 ――十分後。飽きた。


 私は、大の字になって草原の上に寝そべっていた。


 森は見飽きた。そして草原も見飽きた。

 なので次は他の景色が見たくなってくる。


 というか、そういえば、空も真っ白のままだった。

 こういうのも自分で自在に変えることが出来るのだろうか。


 快晴にしたり、曇りにしたり。

 まあ、先にこの白い空を青くしなければ始まらないのだけれど。


 正直、感覚的に出来そうな気がする。

 けれど、は無理。そんな感じが何となくするのだった。


 私は、ゆっくりと寝返りを打つ。

 草の上で寝転がっているのは、ただ歩くことに飽きたからではない。別の理由もあった。


 おそろしく疲れているのだ。


 何というのだろう。身体の中の液体のような、気体のような……。


 とりあえず魔力?っぽいものが底をついた感じがしている。

 休めば回復するのだろうか。どうなのだろう。


 私は目を閉じる。


 そして、夢の中でさらに眠ることにしたのだった。


 ♢


 起きた。おはよう。そして眠い。ずっと眠い。


 相変わらず気が滅入るような森の中。

 ちなみに、今見ているのは夢ではなく、現実である。


 だから、どれだけ眠っても眠いままだった。夢魔なので。


 ああ、眠すぎる。さっさと寝よう。

 夢の中でなら、眠くならずに動くことが出来た。

 だから眠るに限る。

 おそらく先程夢の中で眠ったから、今から見る夢の中では、再度自由に動くことが出来るようになると思う。多分。


 そう思いながら、再度目を閉じようとすると、少し離れた先の木々が倒れていることに気づく。


 そして、よくよく見ているとその木々が倒れている中心に小さな洞穴があった。


 状況的に、地面が盛り上がってそれが出来たのだろうか。

 いつ出来たのか分からなかった。今までずっと、眠ってばかりだったから。


 もしかして地殻変動というやつ? けれど、周囲に地割れとか起きている様子はないし、地震のような揺れが起きていれば、眠っていても気づくだろう。

 あ、いや、分からない。今の体だとやっぱり気づかないかもしれない。


 まあ、そもそもここは異世界だし、もしかしたらファンタジー的な現象なのかもしれないけれど。


 結局のところどうでもいいか、と思いながら私は立ち上がり、その洞穴に近づく。

 眠気でぼうっとしているので、ゆらゆらとした足取りで。


 そして、洞穴の中に入ると私は、すぐに横になるのだった。

 洞穴の奥行きは全く無かった。せいぜい私一人が入ることが出来るくらいのもの。


 これなら雨除けくらいにはなるだろう。

 そう考えて、私は目を瞑る。


 ――そういえばこの洞穴の中、何だか夢の中で感じた魔力的なもので満ちている気がするなあ、とも思いながら。

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夢魔さんはスヤスヤ眠るよ、異世界で 雨菜水 @kagamima

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