第85話 備品はしっかり管理しましょう

 俺たちは地下一階にやって来た。


 そこは高級ホテルの廊下のような場所だった。


 長く広い廊下が一直線に伸び、左右の壁に一定間隔で扉が付いている。


 床には高級そうなオリエンタルカーペットのようなものが敷いてある。


 そして、ガスマスクと青いツナギを身に着けた人間型の生物たちが掃除をしていた。


 なんだあいつらは!?


 もしかして、掃除係なんじゃないか!?


 存在したのかよっ!?


 いや、ちょっと待て。

 それはおかしいだろ。


 そんな連中がいるのなら、上の階があんな惨状になっているはずがない。


 では、あいつらは何者なのだろうか?


「そこの連中、掃除の邪魔ダベサ!」


 掃除係と思われるヤツのひとりに文句を言われた。


 ちょうど良い、こいつに聞いてみようか。


「君らは何者なんだ?」


「我々は『シレモンお掃除代行サービス』の者ダベサ」


 清掃業者の方なのかよっ!?


 シレモンにもそんなのあるんだな!?


「そうなのか。スローライフ邪魔し隊に依頼されてきたのか?」


「その通りダベサ」


 こんなサービスがあるなら、もっと頻繁に頼むべきだな。


「ところで、俺たちはスローライフメタルとスローライフインクというものを探しているのだが、何か知らないか?」


「なんだそれダベサ? 知らんダベサ」


「知らないのか。依頼者から何も聞いてないのか?」


「聞いてないダベサ」


「そうなのか。悪いけど、ここを探させてもらうぞ」


「掃除の邪魔にならないようにしろダベサ!」


「ああ、分かったよ」


 では、手早く探してしまおう。



 えっ!?

 あれっ!?


 これはどういうことだ!?


 どの部屋にも何もないぞ!?


 清掃業者の方がいるだけだ!?


 しかも、下り階段もない!?


 これはいったいどういうことだ!?


 近くにいる清掃業者の方に聞いてみよう。


「ここにあったものは、みんなゴミとして処理場に持って行ったタペサ」


「ええっ!? そこにスローライフメタルとスローライフインクというものはなかったか!?」


「なんだそれはタペサ? 知らないタペサ」


 これはゴミの処理場に持って行かれてしまったのか!?


「依頼主に処分するなと言われたものはないのか!?」


「そんなものはないタペサ」


 スローライフ邪魔し隊の連中は何をしているんだよっ!?


 備品をしっかり管理しろ!?


 おっと、そんなことをやっている場合ではない!


 処理場に行って回収しないと、最悪処分されてしまうかもしれないぞ!


 清掃業者の方に無理矢理ゴミ処理場の場所を聞き出し、行ってみた。



 ゴミ処理場にやって来た。


 そして、ゴミの山の中から、なんとかスローライフメタルとスローライフインクを見つけ出した。


 スローライフメタルは加工されていない鉱石の状態だった。


 外見は青いものが混じった普通の石だな。


 スローライフインクは蓋の付いた小汚いバケツに入った黒い液体だった。


 これではゴミと間違えられて捨てられても、仕方ないのかもしれないな。



 さて、これでようやく全部そろったな!


 では、許可証を発行してもらいに行こうか!!


 だが、その前に体を洗った方が良いな!!


 俺たちはゴミ処理場になぜかあったシャワー室を使わせてもらった。



 俺たちはスローライフ許可証発行所にやって来た。


 いよいよスローライフができるんだな!


 感慨深いなぁ。


 では、入ろうか。



 中は役所のような場所だった。


 窓口が一か所あり、ネイビーのスーツに眼鏡姿の、真面目そうな美女がいる。


 その奥に事務作業用のスペースがあり、四人の職員がいる。


 では、窓口に行ってみようか。


「すみません。スローライフ許可証を発行してください」


「おいらの分も頼むゲスッス!」


「かしこまりましたデアリマス。では、プレートとそこに記載されていたものを提出してくださいデアリマス」


 窓口の担当者にそう言われた。


 俺たちは持ってきた品々をアイテムボックスから取り出し、提出した。


「では、少々お待ちくださいデアリマス」


 職員たちが提出した品々を持って行った。


 そういえば、あれらを何に使うのだろうか?


 窓口の担当者に聞いてみようか。


「スローライフメタルとスローライフインクは、許可証の作成に使用しますデアリマス」


「では、他のものは?」


「私たちのやる気を出すために使用しますデアリマス」


 えええええっ!?


 そんな理由だったのかよっ!?


「今そんな理由なら必要ないのでは、と思いませんでしたかデアリマス?」


 窓口の担当者にツッコまれた。


「えっ!? ええ、ちょっと思いましたよ」


「おいらも思ったゲスッス!」


「はぁ、これだから素人はデアリマス」


 あきれられた!?


「良いですかデアリマス。私たちがタダで働くと思ったら大間違いなんですよデアリマス。モチベーションを高めるためにも、あの品々は必要なんですよデアリマス」


「そ、そうなんですか……」


 窓口の担当者に説教されてしまった。


 もっと簡単に手に入るもので、やる気を出してもらいたいものだな。



「完成しましたデアリマス。どうぞ、お受け取り下さいデアリマス」


 窓口の担当者から許可証を受け取った。


 これがスローライフ許可証か。


 手のひらサイズの青いカードだ。


 クレジットカードのような感じだな。


 何かが書かれているようだ。


 読んでみようか。


 えっ!?

 こ、これは!?


 『スローライフ許可証』


 『発行日より三年間有効』


 と黒い文字で書いてあるぞ!?


 なんだこれは!?

 どういうことだ!?


 スローライフ許可証には、有効期限があるということなのか!?


 ちょっと窓口の担当者に聞いてみよう!


「それは有効期限ですよデアリマス。そうとしか言いようがありませんデアリマス」


「なんでこんなのがあるんだよっ!? 一生スローライフができるんじゃないのかよっ!?」


「それは私に言われましてもデアリマス」


「なら、誰に言えば良いんだよ!?」


「カスクソ邪神だと思いますデアリマス」


「どうすれば文句が言えるんだ!?」


「分かりかねますデアリマス」


「そ、そんなぁ~」


 なんだこれは!?


 苦労して手に入れたというのに、こんなのあんまりだろ!?


 おのれっ、カスクソ邪神め!!!


「こんなの詐欺ゲスッス! ひどすぎるゲスッス!!」


「まったくじゃ!!」


 みんなも激怒しているようだ。



「くそっ、こうなったら、永遠にスローライフをする方法を探してやるぜ!!」


「同志、おいらもやるゲスッス!!」


「ワシもじゃ」


「俺君もやるぜ!」


「付き合うのである」


「仕方ないッスね~」


「よし、みんな行くぞ! まずは情報収集だ!!」


 俺たちは新たな目標に向かって踏み出した。



「皆さんの戦いは、これからだ、という感じですねデアリマス」


「うるせぇよ!? それは俺のセリフだろ!?」


「では、どうぞ、遠慮なく言ってくださいデアリマス」


「えっ!? 俺たちの戦いはこれからだ?」


「はい、では、がんばってくださいデアリマス」


「イマイチ締まらないなぁ…… まあ、いいか。では、がんばるとしようか!!」



 完?

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スローライフをするためには神の許可が必要!?まずはダンジョンを突破せよ!? 三国洋田 @mikuni_youta

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