第四章の裏話
そこにちょっとした人だかりが出来ているのを見つける。
通り過ぎようとすると、聞き慣れた声がした。
「普通に計算すればわかるじゃないですか。お釣りは3
「女の分際でギャーギャーうるせえよ。」
―― ん?
人よりも頭一つ高い
その瞬間、
「きゃっ。」
次の瞬間、考える間もなく
それでも怒りがおさまらず、男の胸ぐらを掴む。
「な、何をする! は、離せ!」
持ち上げた男の体を宙ぶらりんにしながら、殺意を向けた。
「すげーお侍さん! 力持ちだなー!」
「そのままやっちまえー!」
町の人たちの歓声が響き、ふと我に返った。
―― これ以上はいかん。この男はただの商人だ。
あれだけ普段から市中では目立たぬように心がけているのに、こんなに衝動的に行動してしまった自分に戸惑った。
必死に殺意を抑えていると
「お、下ろしてくれ!」
と、男が悲痛の声を上げる。
「あい、分かった。」
―― この辺が落としどころだな
怒りに任せて行動してしまった自分に戸惑いながら、
―― 足を痛めたか
すぐに抱きかかえてやりたい気持ちが湧き上がるが、町の人たちの野次を聞いて我慢する。
―― 人前では、
「あ、あの、お侍さん!」
そこに、見知らぬ子供連れの女が来た。
女は
「そ、その方は私を助けて下さったんです。どうお礼を言っていいかわかりません。お、お願いです。奥様をしからないであげて下さいまし。この通りです。」
「お...おく...」
―― 嫁と思われたのか
その瞬間、自分の顔がブワッと熱くなったのが分かった。
―― そうか、
「…しかるつもりはない。」
本当はしかりたかった。
あんな無茶をして、足を怪我して、擦り傷を作っているのに、
自分がたまたま通りかからなかったら、どんな酷い目に合っていたか。
想像するだけで、またあの男への殺意が湧いてきた。
「
――
今まで感じたことのない感情の波に自分でも戸惑いを隠せず、
ようやく
「あ、あのっ…。」
「大人しく捕まっていろ。」
有無を言わさずそのまま歩き始めた。
―― これだけ心配させられたのだ。このくらい我慢してもらう。
自分でもわけがわからない言い訳をしている。
「あの、自分で歩けます。」
「嘘をつけ。」
―― 例え怪我をしてなくともしばらく離したくはないな。
そんなことをふと思い、その自分の思考に戸惑った。
―― なぜ私はこんなことを思うのだ
悶々と考え事をしている
「ご迷惑かけて、すみません。」
と、しきりに、すまなそうにしている。
迷惑ではないと
迷惑どころか、なぜかこの人の危機を救うのはいつも自分でありたいと思った。
―― そういう気持ちを自分には上手く表現できぬ。
「その足では歩けぬ。オババ様の所まで送って行く故、乗れ。」
「で、でも…」
その姿がなぜかいじらしくて、もうちょっと意地悪なことをしてみたくなった。
「また、さっきの抱き方の方がいいのか?」
「い、いえ、じゃあ、おんぶで。」
顔を真っ赤にして、おずおずと背に乗るという
半ば強引に
―― なんなのだ、この温かさと、柔らかさは!
背中が解けるかと思った。
よこしまな考えが湧き出てくる。
何とか理性を保とうとすると、自然とさらに口数が減ってしまう。
この不思議な感情の処理に困っている所に追い打ちをかけるように、
「はぁ、
「な…何を急に。」
だが同時に
よこしまな事を考えていた自分が恥ずかしくなる。
――
と言いたかったが、
「そなたは誠に能天気な女だ。だがその能天気さに救われる者がいるのは事実だ。」
という言葉になってしまう。
―― くそ。
そんな
―― 全く、
異世界戦国で侍と恋に落ちたら、巫女になって、一緒に国盗りしちゃいました♪ @yuukiakane
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