ふたりの天才の秘めた本音

 研究開発の世界に生きるふたりの男の物語。

 SFです。いわゆるフルダイブVR的な装置の、そのさらに上位版のような夢の機械を開発する、ふたりの科学者の苦悩と葛藤を描いたドラマ。

 過去の記憶を媒体に記録し、それをそのまま脳内で再生できてしまう装置。
 ものがものだけにどうしても、どこからが夢でどこまでが現か、惑いながら読んでしまう……という言い方ではちょっと大袈裟ですけれど、でもそんな読み味。
 ただの階層と記録された記録と現在との、その入り混じるような感覚がとても独特でした。

 特に印象深いのはやはり主人公ふたりのドラマ。
 毛色の違うふたりの天才。片一方からもう一方への、嫉妬混じりの尊敬と憧憬。そして、それが憎しみへと変化する様。
 人の業のようなものがたっぷり詰まった、濃厚な人間のドラマでした。