第2話
テーブルにランタンと緑の本を置く
私は椅子に座り本をめくり始めた
1922年 フランス 夕方
ブルターニュ地方にあるゴアス・アル・ルドゥという小さな村の出来事
ポーリーン・ピカールという2歳の少女が姉と一緒に遊んでいた時、突然行方不明になった。
失踪したポーリーンの捜索は150人という大勢の体勢で行われ数日かけて村とその周辺をくまなく捜索したが、ポーリーンの姿どころかその痕跡すら見つけることが出来なかった。
ポーリーンの悲嘆にくれる家族は、彼女が迷子になって野生動物や自然の中で最期を迎えたと思っていた。
しかしポーリーンが失踪してから2週間後の5月9日 両親のもとに通達が届く。ゴアス・アル・ルドゥから400キロも離れたシェルブールという街で特徴が一致する幼女が見つかった。
少女が発見された時、町の通りに放置されていたらしく警察により病院で保護されていた。
両親がその日のうちに汽車で駆けつけた。
ピカール夫妻が病院に到着して少女を見るなり『私達の娘だ!』と言って大喜びした。
だがポーリーンは凄くやつれていて失踪した時に着ていた服とは、違うものを身に付けていた。それ以外はポーリーンに似ていた。
ポーリーンは両親の姿を見てもなんの反応も見せなかった。そして無言のまま話す事もなかった。彼女の振る舞いや性格も変化していた。言葉(方言)も理解しないようだった。
だがピカール夫妻はこの少女をポーリーンと認める事にした。ピカール夫妻が少女を連れて帰る際、保護していた病院の医師が念の為『本当にあなた達の娘で間違いないのでしょうか』と尋ねると
『勿論だ、この子は自分と同じ髪をしているし、青い目をしている。』と答え、家に連れて帰った。
失踪したポーリーンが無事に村に帰ってきた事で、村にとって大きなニュースとなった。
村人達はポーリーンを一目見ようと集まり
『本当にポーリーンが帰ってきた』と驚いていた。
数日してポーリーンは色んな事を思い出し、 ブルトン語らしい言語を発するようになっていた。無関心だった様子も変わり、色んな事に興味を示した。
ポーリーンが村に帰ってきてから3日程経過した頃、ピカール家に農夫のイヴ・マルタンという隣人が尋ねてきた。
ポーリーンの両親は娘が無事に帰ってきた事を祝って、わざわざ家にやってきてくれたのだろうと思った。だがマルタンはポーリーンを見るなり
『本当にポーリーンなのか?神よ、私をお許しください。私は罪を犯しているのです!』
と叫ぶと狂ったように笑いながら、ピカール夫妻の家を飛び出していった。
それから2週間後の5月26日
ピカール夫妻の家から1.5キロメートル離れた農場で頭部を切り落とされた幼児の遺体が発見された。
発見された遺体は2歳くらいの子供で切り離された頭部の損傷は激しく、人相を確認する事すら出来なかった。
発見された当初は身体に複数の傷があり、腐敗の影響からか手足がなくなっていた。
遺体が発見された場所はポーリーンが失踪した時に村人達が何度も捜索をした場所だった。しかも遺体のすぐ近くには子供の物と思われる服が綺麗に畳んで置いてあり、それをみた村人の1人が口を開いた。
『その服に見覚えがあるぞ、ポーリーンが着ていた服だ!』
と叫んだ。農場で遺体を観察していた人達は慌てふためき、急いでピカール夫妻を呼び、その服を確認させることにした。
ピカール夫妻はそれを見て
『確かにポーリーンが失踪した時に着た服によく似ている』
と証言した。
翌日、遺体の解剖が行われ年齢は2歳半の女児であることが判明した。
そして身体の傷はナイフのような鋭利なもので刺されたと思われるもので複数発見された。胃の中身が空だった事から被害者は行方不明になってから5時間から6時間ほどは生き延びていたかもしれない。
そして切断された頭部の検死は困難で顔は潰れており頭蓋骨はその原型をとどめられないほど損傷していた。
だが切断された頭部の頭蓋骨が子供のものにしてはあまりにも大き過ぎるサイズだった。
検死の結果は明らかに成人した人間の頭蓋骨で男性のものであると判断された。
Incident @rurosan
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