絶望を絶ち、前へ進め。どんなに苦しくても失っても生きていくしかない

現代ファンタジー。
偽善でも優しさを送ろう。

蓮は主人公を恨みから代行させたのではなく、友達が気がかりだけど「祥太に直接声をかけることはできなかった。僕自身、怖かったんだ。生前親しかった友人と話す自分が、泣いてしまうところを容易に想像できてしまって」主人公に頼んだと語っている。
でも、泣いたってかまわないはず。
死んだ後だって、友達に会いたいはず。
だけどあえてそれをせず、姿かたち声までそっくりにして、主人公にさせたのは、黒田悠人もまた、「心残りの友達」の一人だったのだろう。
面識はないかもしれないし、友達でもないかもしれない。
それでも、死んだ蓮は気にしていたのだ。

現在主人公は、姿かたち声まで蓮と同じ。
つまり蓮自身になっている。
蓮は、偽善でも優しくする生き方をしてきたのだろう。
蓮がしているなら、蓮と同じ主人公もしなくてはいけない。
自分と瓜二つの姿にして、主人公に生きる道標を示していたのだ。
けして甘やかした道ではない。
暴言はくよりも、偽善でもいいから優しくする。

でもそれが、人の中で「生きること」だろう。
不良になって三カ月。
いまなら立ち止まってやり直せる。
遅すぎることはない。

蓮が消えた後、主人公はハンカチを拾って持ち主に返している。
すでに蓮から教えてもらった生き方を実践できている。
彼ならもう大丈夫だろう。