第41話 チクワ殺人事件
神奈川県の古いアパートで男性が死んでいた。死因は腹部にある複数の穴からの出血だった。
アパートの管理人が腐臭に気がつき警察を呼んで部屋に入ると、現場には【チクワ】が散乱していた。警察の鑑識が絶句する。なぜならば死因は体内から外に向かっての傷だったからだ。
「この男は、鋭利なチクワで殺されたのか」
「チクワで死ぬなんて……」
謎が深まるばかりで、チクワによる殺人も視野にいれて検討が始まる。
チクワ、それは魚のすり身を火であぶった弥生時代からの歴史的な食べ物だ。冷やしてキュウリを入れて食べるもよし、おでんに入れるもよし、そんな食べ物を殺人の凶器に使う犯人はどんな異常な精神なのか!
「あーすいません、警部さん」
「なんでしょうか、あなたは……生物学者ですね」
「そうです、古生物を研究していますが、これはチクワじゃないです」
「なんですってー」
「被害者はロシア旅行をしていたようです、死因は冷凍されていた寄生虫ですね」
ロシアでは大規模な永久凍土の融解が始まっていた、融解した水には、おそるべき滅んだ顎口虫がっこうちゅうが含まれていた。
「現地の水を飲んで、腹を食い破ったのでしょう……」
SS 雑多な怪談 WsdHarumaki @WsdHarumaki
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