第3話

   

 噴水の前で合流してから一時間後。

 私たちは、小洒落たレストランのテラス席に座っていた。

 パスタとケーキが美味しいお店であり、私と妹の昔からのお気に入りだ。特に、明るい外の日差しに照らされて、開放的な気分で食べるのが大好きだった。

 倫太郎や智樹くんのような男性には、こういうお店の食事は、少しボリュームが足りないかもしれないが……。私たちはいつも、四人で五人前のパスタを注文してシェアするスタイルだ。男たちがそれぞれ一人半くらいの量を食べる形になるので、おそらく大丈夫だろう。


 そして今日も、テーブルの上には五種類のパスタ。

 ただし、少し異なっている部分もあった。いつもみたいな各自の小さなケーキではなく、テーブルの真ん中に、大きなホールケーキが運ばれてきたのだ。

「えっ、どういうこと? こんなケーキ、この店のメニューにあったっけ……?」

 わざとらしいくらい大袈裟に、私は目を丸くする。ケーキには白いプレートが添えられて、チョコ文字で「ハッピーバースデー! 冬美」と記されていた。

「うん、メニューには書いてないけどね。予約すれば、作ってもらえるらしい」

「冬美さん、今度の月曜日が誕生日なのでしょう? 少し早いけど、誕生日のお祝いです。おめでとうございます!」

 落ち着いた声の倫太郎と、陽気な口調の智樹くん。ただし倫太郎の方が、より幸せそうな笑顔を浮かべていた。


「おめでとう、お姉ちゃん。サプライズだよ!」

 妹の夏帆もニヤニヤしている。

 誕生日のサプライズパーティーというのは、ある種の定番であり、その成功を喜んでいる笑顔にも見えるが……。

 真相は違う。妹の目の輝きは、密告者のものだった。

 今日のこのイベントを、昨日のうちに私は聞かされていたのだ。私たち姉妹の間に、隠し事は存在しないのだから。




(「ダブルデート」完)

   

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ダブルデート 烏川 ハル @haru_karasugawa

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