初恋の味
夜桜くらは
初恋の味①
『初恋の味は?』と聞かれたら、どんなものを想像するだろうか。
きっと多くの人が、甘酸っぱい思い出を思い浮かべて答えるだろう。それは、レモンやイチゴのような味だと答える人もいるかもしれない。
または、ほろ苦い思い出を思い浮かべる人も中にはいるかもしれない。それは、ビターチョコレートやブラックコーヒーのような味だと言う人だっているかもしれない。
かくいう私も、初恋は苦い思い出だった。でもそれは、チョコやコーヒーのような苦さではない。
……言うなれば、幼い頃に水と間違えて飲んだ日本酒のような……そんな苦さだ。
そもそも私の初恋は、「思い出」とは言えないかもしれない……。なぜなら、今でもその相手と会う機会があるからだ。
***
私の初恋の相手は、
なぜ、そんなに歳の離れた相手と知り合えたかというと……私と彼が、いとこ同士だったからだ。
私にいとこと呼べる存在は3人いて、それが優輔くんたち兄弟である。3人とも私より歳上だった。だから私は小さい頃からよく彼らと一緒に遊んでいたし、両親たちも仲が良かったから家族ぐるみで旅行に行くことも多かった。
私には弟しかいなかったから、彼に会うたびに、まるで本当のお兄ちゃんができたみたいで嬉しかったのを覚えている。
優輔くんの弟2人は私と歳が近かったから、友達みたいな感覚でもあった。でも、優輔くんは「お兄ちゃん」っていう感じが強くて、私の中では特別な人だった。
彼は私を『
当時の私にとっては、優輔くんはカッコいい憧れのお兄さん的な存在であり、恋愛対象ではなかったと思う。今ならわかるけど、彼のことを好きになる可能性もあったはずだ。
でも当時は恋心なんて全くなくて、ただ純粋に優輔くんと過ごす時間が楽しかっただけなのだ。
そんな私たちの関係が変わったきっかけは、私が10歳……小学4年生の夏休みのことだった。
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