中身
躊躇うこともなく袋を開けた風香、だったが、中身を確認すると同時に動きをとめてしまった。
ちゃっかり独り占めしようと体に寄せて中身を見たせいで、僕からは何が入っていたのかは分からないけど、驚きよりも困惑が強いように感じる。
「風香? 何が入ってたんだ?」
「えっと……」
返答を得られないまま、風香は手に持ったソレを僕に差し出した。
袋のから顔を覗かせた黒いパッチのような布が一切れ。
それ以上にどう表現するべきか悩ましい一枚を見せられたけど、確かにどう反応するべきか悩んでしまう。
「これは?」
答えを探すことを放棄して前を向いた。
「ゴムだな」
「「!?」」
回答を求めた前ではなく、不意に後ろから入ってきた声に、いろんな意味で驚いて僕と風香が同時に振り向く。
「漢太、いくらデリカシーがないからって、そんな言い切ったら失礼だろ」
「じゃあ蓮陽は同じこと思わなかったのか?」
「思ってない」
そもそもソレと無縁な僕にその発想は浮かばなかった……。
と頭の中で一人悲しくなるのだった。
「はははっ、随分素直な物言いしてくれるじゃないか。ま、俺もこれを作った一番の感想と同じだからお咎めなしってやつだ」
「なんだ、分かっててこのままにしてるってことは……遊び心ってやつっすね」
「お、分かってくれるか。自信作ではあるけど、売り物である以上インパクトが大事だからな。ユーモアってやつだよ」
「いいですね! つい衝動買いするクオリティですよ!」
自分で作った道具に対する感想がそれでいいのか甚だ疑問ではあるけど、怒ってないならよし、なのか? なんか意気投合してるし。
「んで、結局これってなんなんですか?」
しかし、またもや漢太が空気を壊しかねないことを言い出し……いや今回に関してはナイスだ漢太。
「ああ、これはな、防弾シールだよ。特別防弾性能の高い繊維で作られていてな、これで服を作れば気軽に手を出せない高級品なんだが、それをシールにすることで原価を抑えて誰にでも手に取りやすいようにした物さ」
アンティカース @odngy
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