オススメ
「そうですね、周りの目を気にしないでいいって意味でもここに通うのもいいかもしれないです」
「……ん」
風香の警戒心は完全に取り払われたわけではなさそうだが、僕と同じく首を縦に振った。
ここまでずっと静かにしていたのは、僕以上に考古学者に対して警戒していたからだろうけど、これからその必要のない先輩達が少しでも増えてくれたらと、相方として密かに願っている。
「なら、その時はちょっとでも買い物してくれると助かる」
伊佐与さんとのやり取りを見たのもあって、少なくともこの人の素直さと人の良さは信用できるかな。
「はい、なら今日も何か買わせてもらうつもりで見ていきますね」
店長の笑顔に笑顔を返し、目の前の商品に目を落とす。
防弾チョッキにロープ、見た目だけなら学校で支給される物と同じ物が並んでいる。
「学校で貰った物と変わらないと思っただろ。だが、学生さんでも買えるように意図して同じ見た目に作っているだけで、性能はこっちの方が少し上だぞ」
「少し?」
オススメとして表に出した商品に対して「少し」という控えめな表現を使ったことに、風香が引っ掛かったらしい。
「少し、だ。さっきも言ったが支給の道具だけで遺跡の調査ができる程度にはいい物を貰ってるからな。この辺の物は中身を少しいじって改良しただけなんだよ」
「……そう」
風香が明らかにガッカリしている。
気持ちはわからないでもないけど……。
「ただし、これだけは支給にない一品だ」
そう言って店長が取り出したのは、お菓子のオマケでついてくるシールが入っていそうな銀色の袋だった。
「おいおい、中身も知らずに見た目だけでガッカリしてないよな?」
「「…………」」
図星を突かれて二人で目を逸らす。
ただそれに気づくくらいならパッケージをなんとか出来なかったんだろうかとも思ったり。
「まあ構わないさ。一度落としてからの方が喜びも大きいからな。それじゃあ、石川さん、開けて中身を見てみな」
「……ん」
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