伊佐与いのりの傷心
「君たちのグループに馴染んでいるって前向きに考えたにしても……いのりが迷惑かけてすまないな」
「いえ、この四人に関してなら完全にお互い様なので」
「そうか……それは、まあなんていうか……」
店長が言葉を濁す。
見るからにドン引きしているけど、ここまでクセの強い集団を簡単に受け入れてもらえる方が難しいわけだし。
「それより、道具の話に戻しましょう。僕としては専門家の意見として、遺跡に行くならどんな道具をオススメしてもらえるのか気になります」
「オススメね……。そこまで言うなら考えてみるか。安全確保する道具でいいんだな?」
すぐに候補を思いついたのか、あまり考える様子もなく店長が店の奥へ入っていった。
それから数分待ち、舞い上がっていた伊佐与さんが冷静さを取り戻すと同時に羞恥に身悶えている頃に店長が店の奥から戻ってきた。
「コロシテクダサイ……」
「いのりはこれから怪物化でもするのか?」
「気にしないでください思春期特有のイタみに苦しんでいるだけですんで」
頭を抱える伊佐与さんの惨状に引く店長に、彼女を宥める漢太が代わりに答えた。
しかし二人は完全に状況を理解した上でやりとりをしているので、その言葉はあえて棘のあるものが選ばれているように感じる。
「これでいのりの生意気ムーブも少し落ち着けばいいんだがな。ま、そんなことより道具の紹介だ。俺も専門店を生業にしている以上プライドがあるからな、それに見合うだけの物を揃えたつもりだぞ」
店長が店の奥から持って来た道具を並べていた。
伊佐与さんはもちろんのこと、側を離れるつもりのない漢太を除いて、僕と、ずっと静かだった風香がまえのめりにそれらに目を突き合わせていく。
「石川風香さんだよな。遠慮して大人しくしているのかもだが、君のことも考古学の発展に欠かせない存在だと思ってるから、うちの店にいる時くらいもう少し気を緩めてくれると助かるよ。ついでに常連になってくれるのも大歓迎だ。もちろん、羽沢もな」
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