古代の天文学を知りたい方へのおススメ本3冊です!
鷲生は次に書く平安ファンタジー小説に陰陽師を登場させようかと思っています。
陰陽師には人を呪ったりする魔術師のようなイメージがありますが、安倍晴明だって天文博士の地位にあり、本職(?)は天文学の専門家でした。
2024年大河ドラマ「光る君へ」ではユースケ・サンタマリアさんが安倍晴明をとーっても胡散臭くw演じてらっしゃいますが、初登場時に「夜の天体観測で寝不足なのに昼間に起こさないで欲しい」と愚痴る台詞があったかと思います。
鷲生も天文学の専門家という点に着目して陰陽師の人物像を組み立てようと思ったので、陰陽師関連の書籍(※1)に参考文献として挙がっていた本を2冊、これらを探しているうちに目に留まった1冊、計3冊を読みました。
以下の3冊です。
『中国の星座の歴史』大崎正次 1987(※2)
『中国占星術の世界』橋本恵三 1993(※3)
『古代の星空を読み解く キトラ古墳の天文図とアジアの星図』中村士 2018 (※4)
陰陽師関連の書籍で紹介されていたのは上の2冊。京都市立の図書館には無く、ちょっと離れた場所にある府立図書館にしかないので、先に市立図書館にあった『古代の星空を読み解く』を借りてきました。
他の2冊も含め、これらの本は理系に分類されるかと思います(そのため本全体がまるまる中華ファンタジーを書きたいという目的に合致するわけではありません)。
筆者の中村士さんにとっての関心事は、地軸の歳差運動を手がかりとして歴史上の天文図の年代を測定することにあります(東大理学部天文学科卒の理学博士でいらっしゃいます)。
歳差運動というのは、地球が真球ではなく赤道の方が大きい扁平な形をしているために、月などからの万有引力が地球に均等にかからず、それで地球の自転軸が首振り運動を起こすこと……だそうです。
地球の自転軸が移り変わるために北極星も時代によって異なり、それで古代の星空と現代の星空は違って見えます。
それを理論や数式を用いて、この古代の星空は○○年だと推定していくのです(プ
ラスマイナス何年の誤差で何パーセントの確率でそういえるか統計学を用いて推論するあたり、理系だなあ~と思います)。
もっとも文系のド素人が手に取ることも想定されているようで、鷲生にとっても興味深い箇所もあります。
目次から抜き出して列挙すると……。
第1章 星座の誕生と歴史
1.1 星座に関する天文学の基礎知識
第2章 古代中国の星座と二十八宿
2.1 甲骨文中の天文記事
2.2 中星
2.3 中国の古代星座
2.4 二十八宿
2.5 星位置の測定と渾天儀(コラム1 渾天儀の基本構造と仕組み)
第3章 キトラ古墳の天井星図と年代測定
第4章 キトラ古墳星図の原点を求めて
4.1 中国正史の中の天文暦学資料
4.2 「石史星経」二十八宿の年代推定
4.3 「石史星経」の先行研究と相互比較
4.4 「天象列次分野の図」の解析
……などです。鷲生の興味に基づいて抜き出していますが、中近世についても触れられていますよ~。
なお。キトラ古墳などに見られる円形星図には、「天の赤道」「天の黄道」も描かれています。
↑鷲生はこれが疑問で疑問でw
古代の人は自分の立っている地面が球体であることも天動説も知らないのに、どうして赤道や黄道を星図に描くことができたのか?
ここら辺を理解するのに随分と迷走しましたw。この経緯は、鷲生の日記エッセイに綴っております。
↓
【中華F】【和風F】星宿の中をうろうろと……。古代天文学を把握するまでの迷走記。
https://kakuyomu.jp/works/16817330661485429107/episodes/16818093081596475292
さて。
次にご紹介するのが『中国の星座の歴史』です。著者の大崎正次さんは文系の方ですが、専門が科学史でプラネタリウムの評議員などを務められたようです。
まえがきから引用しますと……。
「中国星座の分類とその歴史的変遷、中国星座の特色、星座名の意味と解釈、中国星座についてのいくつかの疑問の解明、古い星図についての調査、星座の後代文化への影響、中国名の星座と西洋名との同定については一応の成果は得たと自負している」
こういった本はこの大崎さんの著作まで無かったので、「これらの誰かが一度はすませておかねばならぬ基礎的作業も曲りなりにもひとまずは為し終えたつもりである」と書いていらっしゃいます。
初出は1987年であり、鷲生が府立図書館からお借りしている本の奥付にも昭和(!)62年とあります。
ですが、中国の星座に関する「基礎的作業」として重要だからか、昨年2023年に普及版が刊行されています。
ただ、普及版っつーてもお値段9900円というがツライところですが。けれども、
中華ファンタジーで天文を本格的に扱うなら、手許に置かれてもいいんじゃないでしょうか。また、この普及版が出たことで所蔵する図書館も増えたかもしれません。
3冊目は『中国占星術の世界』です。
この著者の橋本敬造さんも京大の理学科卒の理系の方です。
勘違いする方はいないと思いますが、いわゆる「占いの本」ではないですよ……。「〇月□日の私のラッキーアイテムは何かしら?」とかそーゆー目的に使える本ではありません。
中国古代史において宇宙がどのように観念されていたか、王朝の交替や統治、戦争にどのように必要とされたか、中国の他の占いの卦や五行とどのような接点を持ったかなどの「科学史」の本です。
それでもタイトルで期待するほど多くはないとはいえ、実際にどのような星の動きをどのように占ったのかの例が後ろの方で出てきます。
中華ファンタジーを書く、その中に占星術師を登場させるという目的に一番近いのがこの『中国占星術の世界』かなと思います。
閑話休題。
鷲生は、そもそもなんで古代の人々が星図に「天の赤道」「天の黄道」を描き込むことができたのか理解するのに苦心したと上の方で述べました。
文章だけでは分かりにくいので、星座早見盤を購入して(天体望遠鏡メーカーとして有名なVixenのですw)それを実際に手で動かすことでイメージを掴むことができました。
ただ、残念なのはこの星座は、星座名や星の名前が西洋のものです。
この星座早見盤の古代中国(東アジア)版があればいいのに……と思って探してみると……ありました!
歴史サークル「楽史舎」さまが作成されておられました!(※5)
楽史舎さまは「歴史サークル」だそうですし、同人誌同様Boothで販売されていますが、一部の本は、中国関係の本を扱うことで有名な東方書店でも売られているそうですよ。ですから一定の評価は受けていらっしゃるようです。
楽史舎さまのWebサイト(※6)で発行されている本をを見ていると、面白そうで片っ端から買いたくなってしまいますw
今回は古天文学に関する本を3冊ご紹介しました。
星の観察には冬の方が向いているそうですが、夏休みにアウトドア活動なんかで夜空を見上げる機会も多いかもしれません。
古代中国の天文に詳しくなれば、星の観察がよりいっそう楽しくなるかもしれませんよ!
*****
※1 「新陰陽道叢書 第一巻 古代」 名著出版特設ページ
https://sites.google.com/view/shin-onmyodo/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
※2『古代の星空を読み解く キトラ古墳天文図とアジアの星図』(2018 中村士 東京大学出版会)
https://www.utp.or.jp/book/b378014.html
※3『中国の星座の歴史』 普及版の紹介サイトはこちら。
『中国の星座の歴史』 2023 大崎正次 雄山閣
https://www.yuzankaku.co.jp/products/detail.php?product_id=8922
※4『中国占星術の世界』1992 橋本敬造 東方書店 2024年現在品切れのようですが、Amazonで1980円で中古本が売られていました。
https://www.toho-shoten.co.jp/toho-web/search/detail?id=4497923703&bookType=jp
※5 Booth 「中国の星座早見盤 漢末200年版」販売ページ
https://booth.pm/ja/items/1492565
※6 楽史舎 Webサイト
https://www.diced.jp/~rakushi/index.html
【宣伝】
鷲生の書いた中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」公開しております! ぜひぜひお立ち寄りくださいませ~
https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815
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