死に場所を探す逃避行が生きる場所に変わった。僕らの旅はまだまだ続く

カクヨム甲子園2022 ロングストーリー部門
奨励賞おめでとうございます。


主人公の、含みをもたせた表現に大人らしさを感じる。
 
なぜ主人公は仕事終わりの二十二時ごろ、寝間着に着替えているにも関わらず、七年ぶりに雅灯から連絡があったからといって会いに出かけるのか。
二人は幼馴染だけれども、高校卒業してから七年間も連絡していない。
でも、中学の時は彼女が好きだったと後で告白している。
胸の中に残っていたかすかな気持ちが、主人公を動かしたのかもしれない。

突飛な話の中、
「自分がその立場になってつくづく実感するが、大人という立場は子供が思っているほど楽しいものじゃない。今になって思えば、子供の頃の自分は大人の自分に何を期待していたんだろうとさえ思ってしまう。結局のところ、子供だろうが大人だろうが、自分は自分なのに」
と主人公が大人について語る所が、妙に現実味を感じる。

こういう場面に出会うと、高校生でも類推して書けるけれども、
「つかぬことをお伺いしますが、人生何周目でしょうか」
と尋ねたくなる。

最終的に雅灯は、主人公と逃避するよう地元を離れていく。
妹である彼女は、姉と同じように男の元に転がり込む選択をしてしまう。
雅灯は、まちがいなく秋乃の妹だった。