人を好きになる気持ちのままならなさ

 とある興信所、ハードボイルドな所長と、その彼に惚れる美形のイラさんと、そしてバイトの『僕』の物語。

 依頼された霊的な事件を解決する、探偵もののホラーBLです。
 事件の内容が幽霊がらみ、ということでホラーではあるのですけれど、個人的には恋愛ものにも似た読み味が魅力的だったお話。
 キャラクターの魅力と、その関係性。語り部的立ち位置である『僕』を含めて、絶妙なバランスで成り立っているところが素敵でした。

 なんと言っても目を引かれるのがやはりイラさんの造形。
 とにかく美形、そのうえ有能。同僚からお客さんからもう全員が惚れてしまうほどの魅力の持ち主が、しかしひとり叶わぬ恋に身を焦がしていること。
 まさにタイトル通りの『公然の秘密』。
 この報われなさというか、あるいはそれともいつか奇跡が起こって報われる日が来たりするのか、いずれにせよ本当にたまらないものがあります。

 とはいえ、一番好きなのはやっぱり『僕』の内心というか、彼への印象の揺れ動きなのですけれど。
 一体どのように移り変わるのか、それは本編でじっくり味わってみてください。

 恋のままならなさをズバッと気持ちよく描いた、切なくも楽しいお話でした。