音楽から喚び起こされる感動、その本質はどこにあるのか

 不慮の事故に遭い、チェロ奏者としての未来を絶たれた青年が、〝祖父を弾く〟ことで音楽家としての再起を果たす物語。

 楽器の演奏をモチーフとした現代もののドラマです。
 心震わす壮大な楽曲が聞こえてくるかのような、感動の物語……であるのは間違いないのですけれど、一点だけそこはかとなくおかしいというか、演奏する楽器がなんと『祖父』。
 より詳細には、乳首への操作を介して祖父を鳴らすお話です。

 笑いました。
 ずるい……だってこんなの笑わないはずない……。

 笑ってしまうような面白おかしいお話、には違いないのですけれど、しかしコメディ的であるのはむしろシチュエーションだけで、物語そのものはどこまでも真剣なのがもうたまりません。
 それが余計におかしい、というのもあるのですけれど。でも純粋にストーリーそのものがもう大好きだったりして、いろいろ情緒を滅茶苦茶にされます。

 主題というか、音楽というものの本質への問いのようなものまであったりするところがもう本当にすごい。

 とてもレビューでは伝えきれません。だって祖父の乳首なんだもの。ぜひその目で本編を読むことをお勧めします。
 異様すぎる絵面と、それに負けない骨太なストーリーとが、とても綺麗に響き合う感動の怪作でした。

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