第10話
解散後、一度クラスに忘れ物を取りに行ったためほかの二人より帰るのが遅れてしまった。急いで校門に向かうとそこには見た目が幼い高校生が門の端に寄りかかって立っているのが見え、避けるようにして逆側の端から校門を抜けようとしたとき運悪く彼女が話しかけてきたのがイヤホン越しに聞こえてきた。油断していたところに聞こえてきたので反射的に反応を余儀なくされた。
「そこのあなた、ちょっと待ちなさい」
彼女の方に向いた目は太陽から出てる橙色の光をその身にまとった少女を捉えた。
(やべ、反応しちゃった。まだこのまま通り過ぎれば何とかなるだろ)
「ちょっと、聞こえたんでしょ待ちなさいよ」
「…なんだ」
「あれだけしっかりとこっち見ておいてそのまま通り過ぎるのはすこし図々しいんじゃないの」
「それはごめん。それで、なんか用があるのか」
「……」
「何もないならこのまま帰るぞ」
「…ありがと」
「気にするな、どの部活に入るか全く決まってなかったからな」
「あなたってバカなんじゃないの…やっぱりあなたはバカなままの方がいいわね。じゃあ、また明日」
「じゃあな」
(この答えは彼女にとって間違えは無いだろう。きっと彼女は気づいている、だが互いに知らないふりをしてる方が出来つつある人間関係に傷をつけなくて済むから)
遠のいていく人々の後ろ姿は日陰になっていた。
もう4月も残りわずかになり外の気温がより一層上がってきた日の昼休み、右肩を人差し指で貫手してきた少女は人気のない教室に一緒についてきてほしいという誘いをしてきた。いったいどんなことをされるのかと期待していたが、その教室に入った瞬間にここは現実だったということを思い知った。なぜなら教室の中には先に入っていた金髪の少女が弁当を広げて待っていたからだ。
「あなた達遅かったわね」
「しょうがないだろ、弁当食べてから来たんだから。それで、何を話せばいいんだ」
「そうね、立って話すのは疲れるでしょ、ここに座りなさい」
彼女が弁当を片付けてる間に指定された席に座った。
「まずあなたたちは部活を作るために必要な条件って何かわかるかしら」
「昨日の放課後に初めて部活を作れるなんて知ったからわからない」
「そうよね、じゃあ、まずは条件から話すわね。条件は二つしかないの、一つ目は参加する部員がいること。二つ目は顧問の先生が一人以上いること。これだけよ。そしていま私たちは一つ目の条件はクリアしてる。問題は二つ目、顧問の先生がまだ見つかってないのよ」
「その辺の先生に声かけて適当に顧問にするのはダメなのか」
「昨日の昼休みにそれはしたけどみんな口をそろえて『何をするか決まってない部活には顧問になれない』って言われたわ」
(なるほどな、だから昨日あんな感じになってたのか)
「それでこの昼休みで何をする部活か決めるわよ」
「ちなみにお前のやりたいことはなんだ」
「私はだらだらとした部活がしたい」
「栗原さんは何かある」
「わたしはこの子がやりたいものなら何でもいいです」
「この子ってなんかよそよそしいわね、私は
「何かいい案って言われてもな…あ、今思いついたんだが【日々の楽しいことを研究する部活】ってのはどうだ」
「いったいどんな内容の部活なのかしら」
「自分たちの楽しいことをする部活という表向きの何もしない部活だ」
「いいじゃない、でもちょっと名前が長すぎないかしら。やっぱり部活を代表する名前なんだし長すぎるのはダサいわ、もう少しスタイリッシュに短くならないの」
「そうだなぁ【
「それいいわね、じゃあ放課後になったら顧問の先生を探すわよ」
cross again シュソア @makuriu
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