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エピローグ
夏 高校
「じゃあ、行ってきます!」
そう言って、元気よく小早川つばさは家を飛び出した。
いつもの着慣れた高校の夏服の白いワイシャツと短い紺色のスカートと言う制服姿に、足元に白いスニーカーをはいたつばさは、家を出たそのままの勢いで、まるで溶けそうなほどに熱く焼けているアスファルトの歩道の上を小走りで移動している。
道路には街路樹の緑色の葉の影ができている。
緑色の葉は、真夏の太陽の光を受けて、きらきらと光り輝いて見えた。
すぐに汗をかいた。
結構、気持ちのいい汗だ。
つばさの家から、通っている白鳩高校までは、距離が結構近かった。(歩いて十五分くらい。それが、この白鳩高校を受験することをつばさが選んだ理由の一つでもあった)
すぐに、目的地である見慣れた白鳩高校の真っ白な正門の姿が見える。
そこには、夏の光り輝く太陽を、手のひらでその目元に影を作るようにして、見上げている、つばさと同じくらいの年齢に見える、つばさと同じ白鳩高校の夏服の制服姿の長い髪をポニーテールの髪型にしている、一人の少女の姿があった。
「あ、おーい。おはよう。ひかり!」
元気に手を振りながら、足を止めずにつばさは言う。
すると、その声を聞いて、その白鳩高校の夏服の制服姿の少女は、つばさのほうを見ると、にっこりと笑って、「うん。おはよう。つばさちゃん」と小さく手を振ってつばさに挨拶をしてくれた。
街の中に、気持ちのいい夏の風が吹いている。
その気持ちのいい風の中で、二人はにっこりと笑い合って、そして、やがて、ゆっくりと向かい合った。
(走ってきたつばさの息は少しだけ切れていた。日焼けをしていない真っ白な額には、大粒の玉のような透明な汗をかいている)
「ごめん。まった?」つばさは言う。
「ううん。全然待ってないよ。私も今来たところだよ」と、にっこりと笑って、小林ひかりは小早川つばさにそう言った。
近くの木には蝉がいるのか、みーん、みーんという大きな蝉の鳴き声が聞こえている。
真っ白な正門に、真っ白な歩道。
緑色の街路樹と、くっきりとした陰影のある夏の黒い影。
目に見えない透明な気持ちのいい風。
二人のほかに、人の姿はどこにも見えない。
そんな静かな場所に、二人はいる。
青色の空の中には小さな白い月が浮かんでいる。
時刻は、真昼。
高校の校舎にある大きな時計は、ちょうど十二時を指していた。
目に見えるものしか信じないなんて、ずいぶんと子供っぽいことを言うんだね。
君はもっと大人だと思ってたよ。
一羽の空想の鳥が空の中を飛んでいる。
そんな夢を私は見る。
さるのしっぽ おわり
さるのしっぽ(旧) 雨世界 @amesekai
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