感動に泣いて笑ってもっと胸躍るような、イッツショータイム!

よくできた感動作。
タイムトラベルものである。
大人が描けている所が本作の魅力の一つ。

Mr.マリックが登場する前後の世界を舞台にえらぶことで、余計な説明せずに、主人公には未来が見えるのではと思わせることができるから。
時代の選定が実にうまい。

なにより良いところは、どんでん返しが間隔をあけて、続けて起きるところ。
おまけに、本作は感動作である。
読者を感動させるには主人公を泣かせれば良い。
主人公が母親に未来を話すところで何故泣くのか。
この会話が、母親との最後の会話となるのがわかっているから。
しかも母親の「大好きだよ、愛してるよ」と、主人公が一番ききたかった言葉を聞けた。
読者も涙を誘われる。
しかも今度は父親の「どんだけ嫌われても俺はずっと愛してっからさ、片想いでも。産まれてくるガキが元気に幸せに育ってくれればそれだけでいい……」と子供に対する思いを聞く。
母親とのやり取りで、読者は一度涙腺が緩んでいるので、鼻をすすってもらい泣きをするに違いない。
さらに元の時代に戻って、主人公に会うために父が一芝居打って現れ、「お前の母親のことちゃんと話しとこうと思ってよ」と理由が明かされる。
過去で、大好きな親父にやっと「ありがとう」といったことが明かされる。
父親とのやり取りが思い返されるとき、その時の感情も思い返されるので、気持ちが胸にいっぱいになりながら終わるのだ。

話の運び方が実に上手い。

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