真実とは、決して都合の良いものばかりではない

 見知らぬ少女から声をかけられ、アルセーヌ・ルパンへの届け物を頼まれた少年のお話。

 不思議な空気感が特徴的なミステリーです。
 ある種ファンタジー的なキャラクターが登場し、どことなく寓話のような掛け合いで話が進んでゆく、独特の手触りがとても印象的な作品。

 初対面の少女の謎めいた行動。
 ヒントを求めた『恋多きツバメ』さんは、どこかワイルドカード的な魅力を感じる不思議な存在。
 周囲の人物たちとの不思議な問答を繰り返しながら、徐々に〝真実〟へと近づいてゆく少年の姿が印象的でした。

 興味深いのは、この〝真実〟というものの扱われ方。
 本作中においては決してポジティブなものではない、というところに独特の風味を感じる作品でした。