入っちゃいけないところに迂闊に入るのはやめよう

 何の気なしに蚊を潰した人が、その晩えらい目に遭うお話。

 まさに怪談! と言った雰囲気が魅力のホラー作品です。

 冒頭、主人公が蚊を叩き潰したことを咎める謎のお坊さん(っぽい人)。
 でもそれくらいはしょうがないじゃない、と、どちらかといえば主人公に肩入れしながら読んでいたのが、でもよくよく読み進めると「いやそれは……」となる。
 このミスリード、といっては大袈裟ですけどなにかひと捻りというか、そこで一気に持っていかれました。

 そりゃあね……わざわざ入っちゃいけないとこ入って、それがどうもいわくありそうな場所で、ましてそんなところでの殺生となれば……。
 怪談らしい建て付けというか、恐怖や不吉のお膳立てにワクワクさせられます。

 悪夢にうなされる場面が山場なんですけど、その不条理感というか不快感というか、ねっとり肌にまとわりつくような〝厭〟の手触りがすごい。
 目覚めた後もあと引く「あの感じ」を思い出してしまった作品でした。