2話②
部屋に日が差し込み、スターリーは目が覚めた。
体をのそのそと動かす。
最初に視界に入ったのは、すやすや眠るヒカリの姿だった。
(こいつもベッドに入ってきたのかよ。俺が狭いじゃねえか)
勝手にヒカリのベッドを乗っ取っておいて、勝手なことを思うスターリー。
しかし、思ったより可動域があることに気づいた。
(子供のベッドだと思ったが、けっこう大きめに作られているんだな)
スターリーは体を起こそうとする。
しかし、起きることができない。
手で支えようとするが、手を動かせない。
というより、そもそも手がない。
(おいおい、嘘だろ)
手ではなく、体全体を使い、ようやく起きることができた。
しかし、滑るような感覚がしただけで、視界はあまり変わっていない。
そして、昨夜目線の遥か下にいたヒカリが大きく見える。
その位置からは鏡が視界に入った。
そこに映ったのはヒカリと、水色で透明なスライムだった。
「ススススー!(嘘だろー!)」
スライムの嘆く声が大きく響いた。
ヒカリの部屋の周辺は、同じ学年が集まっているので、今は使い魔を迎えに帰省しているものばかりのため、騒音で迷惑にはならなかった。
被害を被ったのは、すぐそばで聞いていたヒカリである。
ヒカリはびっくりして、目を覚ます。
「お兄さん、どうしたの…」
スライムの姿が見え、目を丸くする。
「お兄さん、スライムに戻っちゃった…」
「スーススス!ススス、スススススススススススススス!(何でだよ!お前、元に戻したんじゃないのかよ!)」
「スライムさんが呪われたことも知らなかったし。ヒカリはただ、使い魔契約したら、お兄さんに戻って、驚いただけ」
「スス、ススススススススススススススッススス(また、人間の言葉話せなくなってるし)。ススススススススススススス(意思疎通が難しくなる)」
「た、大変だね」
ヒカリは苦笑いするしかない。
ふと、スライムは気づく。
(お前、俺の言葉分かるのか?)
その言葉にヒカリははっとする。
「スススス話しているのも分かるんだけど、人間の言葉も二重に聞こえているよ」
(今までよりはましか。前までは人間と会っても、話せなくて不便だったから)
「多分ヒカリの使い魔になったからだと思う」
(使い魔、便利だな)
「あ、そういえば、魔力大分回復したけど。使い魔契約解除する?」
(このタイミングでそれ言う?解除して、ヒカリと話せなくなったら困るんだが)
「じゃあ、まだ一緒にいられるんだ」
口元に笑みを浮かべる。
昨夜からスライムがいなくなることにヒカリは寂しさを感じていた。
(しかし、どうやったらまた人間に戻れるんだか)
「じゃあ、レベル上げる?」
(レベル?)
「やりたいこととは違うかもしれないけど、モンスターがレベル上がって、進化したら人間に近い個体になるものもいるし」
(昨日何で一度でも戻ったのか分からないし。ひとまずはその方法でやっていくか)
「じゃあ、一緒に頑張ろうね。スライムくん」
(おい、それ俺の名前か。種族の名前そのままじゃねえか)
「使い魔と主人の絆を深めるのも、レベル上げるのに必要なことだから」
(魔法とか使い魔には俺は詳しくないからな。まあ、お前、ヒカリに従うよ)
スライムの手を作り出し、ヒカリとスライムは手を握りあった。
スライムくん! 神凪紗南 @calm
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