姉の結婚式、弟の脳裏に蘇る数々の思い出

 結婚する姉に対する、弟の複雑な胸中を描いたお話。

 とても良かったです。
 良すぎて感想がまとまらなくて、でもおすすめしたい気持ちだけが渦巻いて、なにを書いていいかわからないままレビューを書いています。

 こういう「きょうだいならではの距離感」のような題材がそもそも好き、というのはあるのですけれど、それを差し引いてもものすごい作品。
 自然な文章に巧みな話運び、もうのめり込むみたいにぐいぐい読みました。

 弟の心中というか胸中というか、語る様子そのものは静かで穏やかなのに、でもゾワゾワざわつくような手触りが伝わってくるのがもう本当に好きで。

 姉が小さく手を振る一瞬が好きです。というか全部好き。
 完全に弟の視点から描かれた物語なので、姉の胸中はまったく見えず、想像するしかないところが最高でした。
 そして、なかなか想像がつかないところも。
 ぼやけて見えない、掴めそうで掴めない、ただこちらからの一方的な想いだけが渦巻くような、この気持ちの置き場のなさ加減。好き……。

 うまく言えません。言葉にならないんですけど、とにかく面白かったです。
 読み応えの塊みたいな作品でした。この内容が約3,500文字に収まっているのもすごい。