あるいは最初からそこにあった闇

 宇宙からの帰還兵と、それを出迎えた幼なじみ、ふたりの男性のお話。

 戦争終結直後の地球を描いたSF……ではあるのですけれど、大状況はそこまで重要ではなく、あくまで主人公とその幼なじみの因縁の物語です。

 まさにタグの「ヒューマンドラマ」という語の通り。
 いや、「ヒューマンドラマ」と聞いてふんわりイメージするものとはちょっと方向性が違うかも知れませんけど、でも人間のドラマです。
 他のタグを見ればわかる通り、やや不穏な方のそれ。



〈 以下ネタバレ注意! 〉

 重たい執念というか、怨念のような感情の渦巻きっぷりがすごい。

 主人公への復讐譚。幼なじみのシュウさんが主人公のカイさんに対して、その過去の所業を突きつけて断罪するわけですけど、そこに対してカイさんの反応(言葉での言及)が一切ないところが本当に好き。

 認めて悔いるわけでもなければ、反論や言い訳があるでもない。
 挙げられた罪状に対して、読者に与えられるのは原告側の証言のみ。

 こうなるとこちらからは「本当のところ」を推量することができず、それが想像の余地となってモリモリ広がっていくのが最高でした。

 シュウさんの言い分、これが本当なら酷い話。でもシュウさんの受け取り方の問題かもしれない、という線はどうしても残る。いやでも、カイさんの行動を見る限りどうも……などなど、考えが無限に巡ってしまうのがもう本当に楽しい。

 わかりやすくどっちかを「悪」として切り捨てさせてくれないからこそ惹きつけられる、重たい執念と怨嗟の物語でした。