エピローグ

 その日の夜、夢を見た。


 暗い暗い海の夢。月明りがゆらゆらと照らす海の底に、一つだけ沈んでいる頭蓋骨。寂しそうにぽつりと佇むそれの元に、銀色に光るくらげがやってくる。


 くらげは頭蓋骨に触手を伸ばすと、まるで恋人にそうするように優しく抱きしめていた。長年の不在を責めるように、会えなかった時間を埋めるように、愛していると囁くように。


 ――エルダだ。


 そう思った刹那、私は目覚めてしまっていた。目に沁みるような朝日の中、私は一人で泣いた。


 私だって、あなたを愛していたのに。

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elda すが @voruvorubon

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