窓から見える

片葉 彩愛沙

バードアタック

 窓からパリッと音がした。

 腰を上げた後輩がブラインドを上げると、透明なガラスに白い点のようなヒビが見える。

 何かがぶつかったようだ。鋭いものが当たったように。


「……鳥か?」


 彼はブラインドを下数センチ開けて下し、外に出た。俺は首を伸ばして目で追った。

 やがて窓をよぎる影があった。それはブラインドの隙間からこちらをのぞき込んだ。彼──後輩の目だと思えた。

 彼はその場に屈んだ。頭が動いている。

 戻ってきた彼の手には黒いものが握られていた。

 隙間から羽の先の丸い部分のようなものがはみ出ている。


「これ食えると思います?」


 俺は何とも答えづらいが、うんと頷いたら食わせてくるつもりなのだろうか。

 すると、俺は否定したほうが良いのかもしれない。

 首を横に振ると、彼は疲れたようなからかうような微妙な笑いを浮かべた。


「病気になるかもしれませんね」


 彼はまた部屋から出ていった。足音はキッチンへ向かい、勝手口の音がした。

 裏庭にでも捨てたのだろうか。

 蛇口をひねる音。

 手を洗っているのだろう。

 水の音は尿意を誘発させるという話を思い出した。

 思い出すと、何だかしてみたくなってくる。

 とりあえず、彼が帰ってきたらおまるを用意してもらえるように土下座しよう。

 それにしても、あの鳥が窓を突き破ってくれれば良かったのに、と思うが、仕方ないだろう。

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窓から見える 片葉 彩愛沙 @kataha_nerume

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