第6話(終) てへぺろ
~ ~ ~
「……あはは。あー、おかしい。笑いすぎて涙が出て来ちゃったじゃない。ほら、咲恵、あんたから種明かししなさいよ。それも含めて罰だからね」
「はーい。――ごめんねー、貝塚君。私の義理チョコがきっかけで、こんなことになって。ご覧の通り、協力させられたの。許してもらう代わりに、色々命令されて、受けざるを得なかったんだぁ。今日、じゃなくて昨日か、バイトを無断欠勤するように言われたし、そのあともこうして愛菜ちゃんの部屋に来て、色々準備を手伝って。私の顔に死体っぽいメイクをしたのは愛菜ちゃんだけど、愛菜ちゃんに血塗れメイクをしたのは私でーす。電話しながらだったから、やりにくかったよ。えーと、これくらいかな。他に言うことあったっけ、愛菜ちゃん?」
「手とか頭の説明がまだ」
「あっ、そっか。えっと、今聞こえたかもしれないけれども、愛菜ちゃんが“食べた”肘から先の腕や、スイカ並みだって言ってた頭、その他色んなパーツがあるけど、全部作り物だから。驚くなかれ、貝塚君の尊敬する田中景一センパイが作ってくれたんだよー。貝塚君、あとでもらえるかも」
「そんなご褒美、私は出す気はないからね。今回は許すことにしたけれども、浮気がきっかけで利益を得るなんて、馬鹿な法はないわ。だから返しといて、あんたの彼氏に」
「今の愛菜ちゃんに言われたら、聞かなきゃしょうがないし、分かった。あ、ついでに言っておくと、私にはちゃんと付き合っている男性がいて、それが田中さん――田中景一さんなんだー。今度のことの成り行きを彼に打ち明けて頼んでみたら、呆れられたけれども、割と快く作ってくれた」
「――聞いてる、貝塚正太郎? あなたのことだから、もしかしたら、うじうじと文句を付けてくるかもしれないわね。ASMRでの咀嚼音に引っ掛けはない、嘘はつかないと私が言ったのに、この最後の人体は作り物だったじゃないかって。抗議したくなるのは分からなくもないけれども、冷静に思い出してごらんなさい。引っ掛けはない云々と言った時点で、午前0時を確実に過ぎていたわよね? そして今日は何月何日? ……こら、返事しなさいよ。四月一日、エイプリルフールでしょ。よって、私の嘘は免除されるの。お分かり?」
「……全然、貝塚君から反応がないよ、愛菜ちゃん」
「そうね。映像も、何だかスマホが傾いて、壁を映しているし。あっ、もしかして。――おい、貝塚正太郎! 気絶してんの? 起きろ!」
「いいじゃない、しばらく寝かせておけば」
「だめよ。意識が戻った途端、警察に通報されたら偉いことになる!」
「ああっ」
「いい? 声を揃えて起こすのよ」
「うん、分かった」
「「せーの……起きろーっ!!!」」
おしまい
怒った彼女はASMRで僕を弄ぶ 小石原淳 @koIshiara-Jun
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